カンタービレ(7)
[場所:グランド]
[吹雪]:「はあ、はあ……」
[セフィル]:「いいぞ、その調子で後3周だー」
[吹雪]:「は、はい。はあ、はあ……」
俺は走っていた、それこそフルマラソンのランナーばりに。何でか、それはもちろん練習の一環だ。ホーリーカルムを取得するためには、不足している魔力、その他もろもろを補わなければならない。これもそのための訓練だ。スタミナを付けて、ホーリーカルムを持続させるための訓練。スタートしてから2時間、ようやく終わりが見えてきた。
[セフィル]:「ほら、落ちてきてるぞ。踏ん張るんだ、吹雪」
後ろから学園長の檄が飛ぶ。競争馬って、こんな気持ちなのかもしれないな。
[吹雪]:「はあ、はあ……」
[セフィル]:「よし、ラスト1周だ、スパートをかけろ」
[吹雪]:「はあ、ふっ、はあ……」
俺は力を振り絞ってピッチを上げる。
……………………。
…………。
……。
[セフィル]:「よーし、ゴールだ」
[吹雪]:「はあ、疲れた……」
俺はグランドの芝に仰向けに倒れた。
[セフィル]:「とりあえずは及第点だな。よく走りきった」
[吹雪]:「あ、ありがとうございます。はあ、はあ……」
[セフィル]:「はは、まともにしゃべれないくらい疲れたか」
[吹雪]:「そう、ですね。とにかく、限界です」
初っ端から走り込みはかなり応えた。
[セフィル]:「ほら、飲むといい」
[吹雪]:「あ、ありがとうございます」
渡してくれたドリンクを飲ませてもらう。
[吹雪]:「はあー、うめー」
[セフィル]:「ふむ、私も飲みたくなってくるな」
[吹雪]:「学園長、別に喉渇いてないんじゃ?」
[セフィル]:「吹雪飲みっぷりを見てたら渇いてきてしまった。一口飲ませてくれ」
[吹雪]:「あ、はい。どうぞ」
学園長は受け取ると、一口口に含んだ。
[セフィル]:「うん、練習に付き合った後のドリンクはうまいな」
学園長が吐き出した息は白かった。
[吹雪]:「にしても、俺なんかに付き合ってくれてよかったんですか? 学園長」
[セフィル]:「え? どうしてだ?」
[吹雪]:「だって、俺はピアニストのサポートの役回りでしょう? ピアニストのほうが重要視されるはずなのに」
[セフィル]:「うーん、65点の解答だな、吹雪」
[吹雪]:「え?」
[セフィル]:「ちょっと考えが甘いぞ。たかがサポートと思っているかもしれないが、されどサポートだ」
[吹雪]:「は、はい」
[セフィル]:「確かにピアニストは重要な役回りだ。だが、それと同じくらいハーモニクサーも重要な役回りなんだ。吹雪が思ってる以上にな」
[吹雪]:「は、はい」
[セフィル]:「私の考えとしては、ハーモニクサーをこれ以上ないくらいに仕上げることで、ピアニストが最高の演奏ができるものと思っているんだ。どうしてか分かるか?」
[吹雪]:「それは……俺がしっかりしてれば、変に緊張もせず、本来の演奏ができるから、ですか?」
[セフィル]:「そう、その通りだ。分かっているじゃないか。吹雪が完璧なサポートをすればそれだけ四人の負担も減らすことができる。成功への近道なんだよ」
[吹雪]:「なるほど」
[セフィル]:「だから、私は吹雪の練習に付き合っているというわけだ。理解できたか?」
[吹雪]:「はい」
[セフィル]:「まあ、私がこっちを手伝いたかったってのもあるんだがな?」
[吹雪]:「え?」
[セフィル]:「カホラにその気は……いや、どうだろうな」
[吹雪]:「学園長? どうかしました?」
[セフィル]:「いやいや、何でもないぞ。さあ、もう一回ランニングを開始しようか」
[吹雪]:「え? これで終わりじゃなかったんですか?」
[セフィル]:「急遽予定を変更だ。吹雪の基礎体力はこんなものじゃないと私は踏んだ。もう10周くらいいけるだろう」
[吹雪]:「え? マジですか?」
[セフィル]:「うん、マジだ。さあ、行くぞ!」
学園長に急かされ、俺は再スタートを切ることになった。
はあ……疲れた。さすがに限界状態からの10周プラスは辛すぎた。さっきから足が悲鳴を上げている。でもまあ、スタミナがついた実感はあるな、確実に。スピードを緩めるわけにもいかなかったし(学園長が後ろから追いかけてくるから)いい練習にはなっただろう。
さて、ここからはハーモニクサーの第二の使命を果たさなければ。ピアニストとの連携を深め、良い演奏にするために。さて、何処に行こうか。
・第一音楽室
・第二音楽室
・第三音楽室
・第四音楽室
次回から選択肢の内容が入ってきます。好きな子を選んでくれると、お話が楽しくなるかもしれません。
今後もお付き合いよろしくお願いします。