カホラルート・フィナーレ(1)
エピローグ
[場所:図書室]
[カホラ]:「吹雪、悪いけど古書室に行きましょう。大事な資料を取り忘れてたわ」
[吹雪]:「うん、分かった」
――季節は春、二月の中旬を過ぎる頃には雪もすっかり降らなくなり三月になった今は、春の陽気が差し込んできている。
今から一週間前、カホラは無事学園を卒業した。檀上で証書をもらうカホラの優雅な振る舞いは今もとても印象に残っている。しかし名目上、三月が終わるまでは学園生ということになっているので、今はこうして二人で違う探索を行っている。
まあ違うと言っても、四季のピアノに関係していることなのだが。
[カホラ]:「……後少しで、この学園ともお別れね」
[吹雪]:「寂しいかい?」
[カホラ]:「少しね、でも、二度と戻ってこれないわけじゃないから、泣きそうになるほどじゃないわ」
[吹雪]:「そうだね、四年後の今くらいには、挨拶にやってきてるかもしれないしね」
[カホラ]:「お母さんに挨拶してるってこと?」
[吹雪]:「まずは学園で一番偉い人に挨拶するのが基本だよね?」
[カホラ]:「それまで学園長をやっていれるのかしら?」
[吹雪]:「やってると思うけどね」
[カホラ]:「理由は?」
[吹雪]:「……ごめん、理由はないです。でも、何となくそんな気がしてさ」
[カホラ]:「私も、そうだと思いたいわ」
[吹雪]:「そういえば学園長、カホラのまとめた資料を読んだんだよね? 何て感想言ってた?」
カホラは卒業する前に学園長室に行き、今までの調査結果を資料に持論を交えてまとめ、そして提出した。俺は一度読ませてもらったんだが、ピアリーから得た情報をベースにまとめられた資料はとても分かりやすく、要点を抑えたとても素晴らしい出来だった。
[吹雪]:「何となく予想はつくけど、カホラの口から聞きたいな」
[カホラ]:「ほとんど、吹雪の予想してる通りよ。ふふ、満点合格をもらったわ」
[吹雪]:「それはよかった、俺と同じような反応してたでしょう?」
[カホラ]:「自分で言うのは憚られるけど、そんな感じだったわ。カホラはもう一人前の学者だなって言ってたわ」
[吹雪]:「よかったじゃない、本物の学者になれる日も遠くないね」
[カホラ]:「でも、私が本物の学者になるには、優秀な助手が必要だけどね。例えば、私と同じように四季のピアノに興味を持ってて、私のことを好いてくれる人」
[吹雪]:「……速攻で立候補しますよ、カホラさん。というか、俺以外の人を助手で雇ってほしくないな」
[カホラ]:「うふふ、もちろん冗談よ。吹雪以外の助手なんて、考えられないわ」
[吹雪]:「ちょっと安心した。とにかく、合格をもらえてよかったね」
[カホラ]:「ええ、本当に」
[吹雪]:「その資料は、どうすることにしたんだい?」
[カホラ]:「お母さんとそれに関して話したんだけど、しばらくは、この学園の古書室に置いておくことにしたわ。やっぱり、秘密にしておいたほうがいい情報かもしれないし、公に知らせると色々と面倒かもしれないしね。来るべき時がきたら、発表するかもしれないけど」
[吹雪]:「そっか」
[カホラ]:「それにね……古書室に私たちの資料を残しておけば、いつか、私たちみたいな人が出てくるかもしれないでしょう?」
[吹雪]:「あはは、なるほどね」
[カホラ]:「滅多にないことかもしれないけど、そのおかげで私たちはこういう関係になれたわけだし」
[吹雪]:「絶対ってことはないだろうね、確実に」
[カホラ]:「でしょう? そういうわけで、ここに残しておくことにするわ」
[吹雪]:「手に取ってもらえるといいね」
[カホラ]:「欲を言えば、発見する喜びを知ってほしいところね」
[吹雪]:「そうだね、目に見えるもの以外に見つかるものがあるかもしれないし」
[カホラ]:「……私たちの関係、見たいなものとかね」
[吹雪]:「……自分で言って恥ずかしがってない? カホラ」
[カホラ]:「ちょっとだけ、うふふ」
[吹雪]:「無理にとは言わないけど、人との関わりの大事さとかは知ってほしいね」
[カホラ]:「そうね、それが、未来の自分に役だってくるだろうからね」
[吹雪]:「違いない」
その経験があって、今の俺たちが存在しているから。
[カホラ]:「これからも、二人で頑張っていこうね、吹雪」
[吹雪]:「うん、もちろんだよ!」
[カホラ]:「じゃあ早速、古書室に行きましょう」
[吹雪]:「おおー!」
調査の最中に発見した恋心と言う宝は、これからも俺たちの中で育てていく。どんな困難が待ち受けていても、二人でなら笑って乗り切れるはずだ。
[カホラ]:「吹雪、ずっとずっと、大好きだからね」
END
長い間ありがとうございました。
これにてカホラルートは終了です。
次回からは杠聖奈美のルートを載せていきたいと思います。
まだまだ作品は終わりませんが、これからもよろしくお願いします。