カホラルート・フォルツァンド(5)
[吹雪]:「――よし!」
俺は気合いを入れ直す。儀式開始まで残り30分、ピアニストの4人は学園長によって神殿まで運ばれる。
[カホラ]:「いよいよね、吹雪」
横にいたカホラがそう語りかけてくる。
[吹雪]:「緊張してるかい?」
[カホラ]:「してない……っては言い切れないわね。でも、吹雪から勇気もらったし……成功する自信はたくさんあるわ」
[吹雪]:「それはよかった。足りないようならあげるつもりでいたけど」
[カホラ]:「こ、ここではさすがに……恥ずかしいわよ」
[吹雪]:「公認になって喜んでたのはカホラのほうじゃなかったっけ?」
[カホラ]:「そうだけど、何だか今は吹雪のほうが嬉しそう」
[吹雪]:「そうかな? まあ嬉しいと言えば嬉しいけど」
[カホラ]:「そう言い切れちゃう辺り、つくづく成長したって思うわ」
[吹雪]:「嫌だったかい?」
[カホラ]:「……反則よ、その質問は」
逆の意と捉えて問題はないだろう。
[聖奈美]:「ん、んん! あの、二人とも? そろそろラブラブモードは解除したほうがいいんじゃないですか?」
[カホラ]:「あ、そ、そうね。ごめんね」
見るに見かねたのか、杠が注意を促してきた。
[聖奈美]:「全く、すぐイチャイチャしだすんだから」
[舞羽]:「でも、最初に公認したのって杠さんだったような」
[聖奈美]:「た、確かにそうだけど……ここまでするとは思ってなかったのよ」
[舞羽]:「ふふ、誤算だったんだね。杠さんらしくないな」
[聖奈美]:「……そういうことに関して、常識は通用しないのよ」
――今ではすっかりこの二人も仲良くなったようだ。見ていて、ちょっと嬉しく感じた。
[繭子]:「みんな、そろそろだよ~」
マユ姉の呼びかけに、俺たちはその場に並んだ。
[セフィル]:「準備はいいか? 五人とも」
[五人]:「はい!」
[セフィル]:「よし、では行くとしよう。じゃあ、舞羽から連れて行くとしよう」
[舞羽]:「はい」
[吹雪]:「頑張れよ、舞羽」
[舞羽]:「うん、吹雪くんもね」
穏やかだけど、力強くうなずき、舞羽は神殿に向かう。
……………………。
[セフィル]:「次は、聖奈美だな」
[聖奈美]:「はい。…………」
特に俺にしゃべりかけるわけではないが、その気持ちはしっかりと伝わってきた。
……………………。
[セフィル]:「次は、繭子か」
[繭子]:「はい」
[吹雪]:「しっかりな、マユ姉」
[繭子]:「もちろん! 練習の成果、ぜーんぶ出してくるから」
…………。
[セフィル]:「じゃあ最後に、カホラ、行くぞ」
[カホラ]:「はい」
うなずき、俺の方に振り返る。
[カホラ]:「行ってくるわね、吹雪」
[吹雪]:「うん。後で、また会おう」
[セフィル]:「はっは、相変わらず熱いな、二人は」
[カホラ]:「嫉妬してるの? お母さん」
[セフィル]:「何を言うか、そんなことはないぞ」
[カホラ]:「本当かしら?」
[セフィル]:「……そ、そんなことはいいじゃないか。さあ、行くぞ」
[カホラ]:「うん、よろしく」
[セフィル]:「じゃあ吹雪、少し待っていてくれ」
[吹雪]:「分かりました」
手を振ったカホラに、俺も手を振って返した。
……………………。
そして、数分後、学園長が戻ってきた。
[セフィル]:「待たせたな、では、行こう」
[吹雪]:「はい!」
俺は学園長に連れられて、聖壇へと向かう。
…………。