カホラルート・ソンス(19)
休憩を挟み、事後処理をした後、俺たちは図書室で寄り添っていた。まだ就寝まで時間があるのと、戻ってしまうと二人きりになれないから。
腰かける椅子があるにもかかわらず、俺たちは床に腰を下ろして座っていた。もちろん、右手でカホラを引き寄せて。
[カホラ]:「ん、暖かい」
[吹雪]:「もう暖房切れちゃってるからね」
[カホラ]:「まあ、こんな時間に利用する人もいないし、当然なんだけど」
[吹雪]:「寒かったら、もっと寄ってもいいからさ」
[カホラ]:「本当?」
[吹雪]:「当たり前だよ」
[カホラ]:「じゃあ、お言葉に甘えて」
体をもう一歩踏み込み、俺に完全に密着する。
[カホラ]:「はあ、こっちのほうが落ち着くわね」
[吹雪]:「俺としても、こっちのほうがいいかな」
[カホラ]:「どうして?」
[吹雪]:「カホラを近くに感じるからね」
[カホラ]:「十分近かったと思うわよ? この前の格好だって」
[吹雪]:「今は隙間もないから。気分的に、二人の距離はゼロって思えるんだ」
[カホラ]:「うふふ、何だかおもしろい考え方ね」
[吹雪]:「変かい?」
[カホラ]:「ううん、吹雪らしくていいと思うわ」
そう言ったカホラは頭の位置をずらし、俺の太腿を枕にし始めた。
[カホラ]:「普通は逆なんだろうけど、いいよね?」
[吹雪]:「カホラのしたいことは、俺のしたいことだよ」
否定する理由が見当たらない。
[カホラ]:「ゴツゴツしてるのかなって思ったけど、意外と柔らかいものね」
[吹雪]:「意識して固くしない限りはね」
[カホラ]:「じゃあ、今は力を抜いてるってこと?」
[吹雪]:「抜いてるっていうか、抜けてるっていうか……」
[カホラ]:「――もう、エッチね、吹雪は」
[吹雪]:「自分でも思った。今のは言わなくていいことだったね」
[カホラ]:「吹雪は素直だからね。でも、そういう裏表のないところ、私は好きよ」
[吹雪]:「カホラが好いてくれるなら、それだけでいいな」
[カホラ]:「他の人の信頼はいらないってこと?」
[吹雪]:「そういうわけじゃないけど、カホラに信頼されることが、今の俺には一番嬉しいことだからさ」
[カホラ]:「……まだ、このむず痒い感覚には慣れられそうにないわね」
[吹雪]:「無理になれなくてもいいじゃないか、恥ずかしがるカホラが見られないのは寂しいし」
[カホラ]:「そ、そんなところ見たいの? 吹雪は」
[吹雪]:「カホラの仕草は何もかもかわいいからね。可能なら見ていたいって気持ちがある」
[カホラ]:「……意識してできることじゃないわよ、そういうことは」
[吹雪]:「だからこんな風にして褒めてるんだよ」
[カホラ]:「ふ、吹雪、ひょっとして狙ってやってたの?」
[吹雪]:「まあ、ちょっと……でも、嘘は一言も言ってないよ」
全てが本心から来ている言葉だと自信を持って言える。