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ソプラノ  作者: BAGO
カンタービレ
29/1013

カンタービレ(5)

[繭子]:「う~、後になればなるほど、本当に選ばれるのか不安になってくるなー」

[セフィル]:「分からなくはないが、それはないと思うぞ繭子。お前を選んだのは四季のピアノには違いないんだ。それらが選ばないなんてことはあり得ない」

[繭子]:「ホントかな? やっぱや~めた、とか言われたらワタシ立ち直れないよ」

[セフィル]:「ないから、安心しろ」

[繭子]:「ふー、ドキドキだよ」

[セフィル]:「うむ、大分日が暮れてきたな、少し急ぐか」

[吹雪]:「集まったほうがいいですよね?」

[セフィル]:「そうだな、私の周りに」

俺たちはわらわらと集った。

[セフィル]:「よし、では行くぞ」

……………………。

…………。

……。

[繭子]:「うー、緊張するよー」

[カホラ]:「大丈夫ですよ先生」

落ち着かないマユ姉を、先輩が宥めている。

[聖奈美]:「どっちが先生なのかしら」

[吹雪]:「そう思うのも無理ないな」

[聖奈美]:「あら、珍しく肯定するのね」

[吹雪]:「正論だからな」

[聖奈美]:「先生をかばうってことはしないのね」

[吹雪]:「どうしてする必要があるんだよ」

[聖奈美]:「ま、まあ、あなたがそう言うのならいいけどね、別に」

[吹雪]:「あれ? そういえばダルクはどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」

[聖奈美]:「ああ、今日はお留守番してるわ。今頃家で昼寝でもしてるんじゃないかしら」

[吹雪]:「体調でも悪かったのか?」

[聖奈美]:「そういうのじゃないわ。ダルクから今日は行かないって言ったのよ。あの子なりの気遣いなんじゃないかしら」

[吹雪]:「なるほど。いい使い魔じゃないか」

[聖奈美]:「…………」

[吹雪]:「な、何だよ」

[聖奈美]:「あなた、ダルクのこととなると随分優しいのね」

[吹雪]:「ん、そんな風に見えるのか?」

[聖奈美]:「ええ、すごく。ダルクを否定してるところを見たことがないもの」

[吹雪]:「そりゃそうだろ、否定する理由がない」

[聖奈美]:「…………」

[吹雪]:「だ、だからその目はなんだよ」

[聖奈美]:「言っておくけど、ダルクはあげないからね」

[吹雪]:「んなことは分かってる。ダルクだってそう思ってるだろうよ」

[聖奈美]:「そ、そうかしら」

[吹雪]:「当たり前だろ。俺とお前って言ったら、真っ先にお前の元に行くさ」

ダルク自身も、杠のことを大事に思ってるようだし。

[吹雪]:「仲良くしろよ、あんないい使い魔、他にいないはずだ」

[聖奈美]:「あ、あなたに言われなくとも分かってるわよ」

相変わらず口調はキツいな……。

[舞羽]:「吹雪くん、杠さん、始まるみたいだよ」

[吹雪]:「お、そうか」

[聖奈美]:「…………」

[セフィル]:「よし、二人とも、さっきのようにするんだ」

[繭子]:「はーい」

[カホラ]:「はい」

二人は目を閉じ集中する。

[繭子]:「…………」

[カホラ]:「…………」

……………………。

…………。

……。

少しすると――。

[繭子]:「あっ!?」

どうやら、紅葉のピアノはマユ姉を選んだようだ。

[繭子]:「しゅ、集中、集中……」

そう言いながら目をつぶる。しばらくして、光は収まった。

[繭子]:「ふう、よかった~」

[セフィル]:「繭子、手を開いてみるんだ」

[繭子]:「あ、はい」

手を開くと、石は黄色に変化していた。見た目からして、イエロージャスパーだろう。

[繭子]:「やった、選ばれたんだー」

[セフィル]:「だから言っただろう? 選ばれないことはないって」

[繭子]:「はい、ホントによかったよー」

本当に心配だったんだな、マユ姉。

[繭子]:「ふーちゃん、ふーちゃん。ワタシ選ばれたよー」

[吹雪]:「あー、見てたから分かってるって」

[繭子]:「誉めて、誉めて」

[吹雪]:「はいはい、よかったな、選ばれて。だが、これからが本番なんだから、手を抜くなよ」

[繭子]:「はーい」

[聖奈美]:「……本当に、教師なのかしら」


[セフィル]:「さて、残るはカホラだけだな」

[カホラ]:「順当に行けば、私は風花のピアノってことになるわね」

[セフィル]:「うむ、そうなってほしいものだ。みんな、後少しだから付き合ってくれ」

[4人]:「はい」

[セフィル]:「よし、行くか」

……………………。

…………。

……。

[繭子]:「えーっと、舞羽ちゃんが桜花のピアノで、聖奈美ちゃんが海風のピアノ、で、ワタシが紅葉のピアノだね」

[舞羽]:「そうですね」

[聖奈美]:「で、カホラさんが風花のピアノになるわけですね」

[繭子]:「そっか。うん、みんなそれぞれ季節にピッタリ合ってるね」

[聖奈美]:「そうですか?」

[繭子]:「うん、舞ちゃんは、春ーって感じだし、聖奈美ちゃんも夏ーって感じがするよ」

よく分からない主張だな、というかさっきの舞羽の言ったことに若干似ている。

[繭子]:「カホラちゃんも冬ーって感じがするしね」

[聖奈美]:「そ、そうですか」

[繭子]:「うん、頑張らなくちゃ」(繭子)

[聖奈美]:「その意見には賛成ですね」

[セフィル]:「よし、じゃあカホラ、以下略だ」

[カホラ]:「はい」

先輩は目をつぶり、集中を始める。

[カホラ]:「…………」

……………………。

…………。

……。

[カホラ]:「きた……」

光が右手から放たれる。

[セフィル]:「うん、これで全員の役割が決まったな」

[カホラ]:「はあ、安心した」

[セフィル]:「手を開いてみるんだ」

[カホラ]:「うん。……何だか、みんなとは違う色をしてるわね」

[繭子]:「えー? どれどれ?」

[舞羽]:「あ、ホントだ。何だかまだらみたいな模様してる」

[聖奈美]:「確かに、あたしたちの色合いとは違うわね」

[カホラ]:「お母さん、これは何ていうの?」

[セフィル]:「それは、オビキュラージャスパーだな」

[カホラ]:「オビキュラー?」

[セフィル]:「うむ、おそらくは雪みたいなのを現しているんだと思う」

[繭子]:「そうなんだー。そう言われてみるとそんな感じがするかもー」

[セフィル]:「まあ、何にしても、全員立派な宝玉に変化してよかった」

[舞羽]:「そうですね、全員四季のピアノに認めてもらえたわけですし」

[セフィル]:「うむ、そういうことだ。これで、遠慮なく特訓に望むことができるな」

[舞羽]:「頑張らなくちゃ」

[繭子]:「そうだね」

全員、やる気を表に出していて、モチベーションが高まっているようだ。俺も、頑張らないといけないな。ホーリーカルム、絶対に取得しなければ。

[セフィル]:「さて、今日は終わりだ。疲れただろう、ゆっくり休むといい」

俺たちは神殿を後にした……。




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