カホラルート・ソンス(1)
12月30日(木曜日)
[場所:社会科室]
――一夜明けて、今日はスッキリ目覚めることができた。まだ昨日の興奮が頭から離れていないのもあるかもしれないけど。
おそらく、今日で調査は終了できるはず。嬉しいような悲しいような……でも、今俺はすごいわくわくしてる。今まで頑張って調べてきた結末を知ることができるわけだからな、どんな風にどういう経緯で四季のピアノはできたのか……真実をこの目にしっかり焼き付けないと。
[吹雪]:「とりあえず、顔洗うか」
布団から這いでて、水飲み場へ向かう。
…………。
[場所:水飲み場]
[カホラ]:「あ、おはよう吹雪」
どうやら先客がいたらしい。
[吹雪]:「おはよう、カホラ」
[カホラ]:「あら、何だかいつもよりテンション高いわね」
[吹雪]:「今の一言で分かったの?」
[カホラ]:「ええ、ちょっとトーンが高くなってるもの」
[吹雪]:「実際そうだからね、そういうカホラもテンション高く見えるよ」
[カホラ]:「当然よ、ずっと知りたかったことを知ることができるんだから。嬉しい気持ちでいっぱいよ」
[吹雪]:「うん、俺も同じだよ」
[カホラ]:「本当に、ピアリーには感謝しないといけないわね。ここまで調べることができたのは、彼のおかげだもの」
[吹雪]:「カホラが彼に注目したのも大きなポイントだと思うよ」
[カホラ]:「ふふ、そうかしら? でも、注目せざるを得なかったんだけどね。私の知りたい情報がたくさん載っていたし、他の学者よりも熱心にピアノについて調べていた感じだったから」
[吹雪]:「他の学者にないものを感じ取ったんだね」
[カホラ]:「何て言うのかしら? 女の勘?」
[吹雪]:「こ、ここでそれを持ってくるんだ」
[カホラ]:「おかしかったかしら? じゃあ、文学者の勘?」
[吹雪]:「……うん、そうだね」
[カホラ]:「あら? 突っ込まれると思ってたんだけど、突っ込まないの? まだ学生じゃないかーって」
[吹雪]:「ここまで努力して調べて、真実に到達することができたんだから、カホラはもう立派な文学者でしょう。俺は保障できる自信があるよ」
[カホラ]:「……ありがと、吹雪」
柔らかい笑みを浮かべながら。
[カホラ]:「でも、びっくりしたわよね。ピアリーにあんな過去があったなんて」
[吹雪]:「そうだね、てっきり一人で調査をしていたのかと思ってたけど。夫婦で調査していたとは思わなかったよ」
[カホラ]:「一言も名前とか出てこなかったものね。まあ調査資料に彼女の名前なんて出さないか」
[吹雪]:「それは、そうだね」
[カホラ]:「ピアリーも、たくさんの人との交流を通して真実に辿り着いた。学者っていうのは、人とのつながりが大切になるものだって、この調査で学ぶことができたわ」
[吹雪]:「個人のプレイに見えるけど、実際はたくさんの人を通さないとできないこと」
[カホラ]:「うん、……会ったことはないけどピアリーは私たちの偉大な先輩ね」
[吹雪]:「うん、俺に大切な人を気付かせてくれたし」
[カホラ]:「もう、急にそんなこと言われたら照れちゃうでしょう?」
[吹雪]:「ごめんね、ちょっと狙ってた」
[カホラ]:「意地悪ね、吹雪は。でも、そう思ってるのは吹雪だけじゃないからね、私だって同じくらいそう思ってるから」
[吹雪]:「うん、すっごく嬉しい」
[カホラ]:「……あ、いけない、ちょっと話し込んじゃったわね。そろそろ準備しないと。明日が本番だし、今日は練習もミッチリしないと」
[吹雪]:「そうだね、ここまでやってきてそれは絶対に許されないもんね」
[カホラ]:「ええ、頑張りましょう」
[吹雪]:「おー!」