カホラルート・アモロサメンテ(10)
[吹雪]:「到着、と」
これで、神殿ツアー二周目終了か。月影のピアノが置かれている神殿、何となくだが、この空間一帯は穏やかな流れを感じるな。秋という季節にはそんなイメージが俺の中にはある。さて、今までの感じでいけば、ここにも情報はない可能性が高いんだが……他の神殿を調査してこの神殿だけ探さないというのはどうも後味が悪いもんな。敬意を表して探索させてもらおう。もしかしたら何かあるかもしれない。ちょっとでも可能性があれば、俺はそこに賭けてみたい。
[吹雪]:「じゃあ、ちょっと失礼しますね」
軽く会釈をし、俺は外周を見て回る。
……………………。
[吹雪]:「うーん、やっぱりないのか?」
ないならないで、それは納得もいく。やっぱり神殿のところにはないってことなのか?
後半分でぐるっと一周か。
…………。
[吹雪]:「うん、予想通りの結末か」
こればっかりは仕方ないか。切り替えて向こうの探索に参戦しようか。
[吹雪]:「じゃあ、お邪魔しました」
会釈して引き返そうとした時――。
[吹雪]:「――ん?」
会釈した目線の先、そこにはどこにでもある普通の石が地面に埋まっていた。しかし、その石の表面には少々違うものがあった。
[吹雪]:「これは、文字か?」
人工的とは言い難い、人間によって記された文字がそこには書かれてあった。
[吹雪]:「何て書いてあるんだ? これは」
石に近づき、目を凝らしてよく見てみる。……何か数字のようなものが彫られてるみたいだ。
[吹雪]:「何々? ――74P、N・P……ひょっとして、ピアリーが記したものか? これは」
N・Pっていうのはおそらくピアリーの本名のイニシャルだったはず。その74Pというのは……何かの手掛かりを表しているのか? 他にも何か記されてないか見てみたが、どうやらこれ以外には何も書かれていないようだ。
[吹雪]:「思わぬところで思わぬものを発見したな」
神殿の裏側の石にこんなものを……ピアリーもなかなかすごいところに文字を残すな。やっぱりそういった才能が彼にはあったのかもしれない。
[吹雪]:「とにかく、これは帰ってカホラに報告しないと」
今日も坊主で帰ることはなくなったかな?
…………。