カホラルート・アモロサメンテ(6)
[吹雪]:「――もう日も暮れるな」
そろそろ帰り支度を始めたほうがよさそうだ。
[吹雪]:「おーい、みんな、そろそろおしまいにしよう」
[祐喜]:「分かったー」
[舞羽]:「あ、もうそんな時間だったんだ」
どうやら時間を忘れて探してくれていたらしい。
[舞羽]:「愛海、そろそろ終わりだよー」
[愛海]:「後ちょっとでこっち見終わるから、もう少し待ってー」
[祐喜]:「ふう」
[吹雪]:「お疲れ。何か見つかったか? ――って言いたいけど、あったらとっくに報告してるか」
[祐喜]:「残念だけどね。吹雪のアドバイス通り、舐めるように調べてはいたんだけど」
[舞羽]:「見つけられなかったよ」
[吹雪]:「まあしょうがないか。今回のエリアにはないってことだけでも収穫だな」
[祐喜]:「発見慣れしてる吹雪より先に見つけて、驚かせてやろうって思ってたんだけど、そうは問屋が降ろさなかったみたいだよ」
[吹雪]:「実際、ちょっと思ってただろう? そんなに見つからないわけがないだろうって」
[祐喜]:「そうだね」
[舞羽]:「う、うん」
二人は顔を合わせて苦笑いする。
[舞羽]:「楽じゃないってこと、身を持って実感しました」
[吹雪]:「そうなんだよ、俺も最初は二人と同じ考えだったからな。でも、カホラの話と初調査に行った時に、ようやくそれを実感したんだ。きっとテレビとかでやってる宝探しよりよっぽど難しいはずだ」
[祐喜]:「じゃあ、これでストーンサークルを見つけられたらトレジャーハンターも夢じゃないかもしれないね」
[吹雪]:「確かに、多少の才能はあるかもしれないな」
[舞羽]:「トレジャーハンターになりたいの? 祐喜くんは」
[祐喜]:「ううん、全然。それは趣味であって本業にしていいものじゃないと思うから」
[吹雪]:「同感だ、そんな仕事で食っていけるほど世の中甘くないからな」
[舞羽]:「吹雪くん、何だか悟ってるね」
[吹雪]:「ただ現実を受け止めてるだけさ」
[愛海]:「おーい、お待たせー」
夕日に照らされる中、日野が遅れて戻ってきた。
[吹雪]:「何か手がかりは?」
一応聞いてみることにする。案の定日野は首を横に振った。
[愛海]:「指示通りに見て回ったけど、これといって目に留まるようなものは見つからなかったわ。ごめんね」
[吹雪]:「いや、いいんだ。想定の範囲内だからな」
とは言っても、収穫がないのは少々手痛いが……。
[祐喜]:「吹雪、明日はどうするんだい?」
[吹雪]:「ああ、明日も調査はする予定だ」
[祐喜]:「よかったらさ、明日も手伝わせてよ。どうせやることもないしさ」
[吹雪]:「い、いいのか? 今日突然頼んだんだし無理に手伝おうとしなくても……」
[祐喜]:「吹雪はそういうところ、ちょっと固いよね。気にすることないんだって、友達でしょう? 友達、こういう時くらいは頼ってくれないとさ。ね? 二人とも」
[舞羽]:「うん、結構楽しかったしね」
笑顔でそういうのは舞羽。
[愛海]:「私も、大久保くんの心からのありがとうが聞けるまでは付き合うつもりよ」
[吹雪]:「それはありがたい。じゃあ、頼むな、三人とも」
[祐喜]:「もちろん」
[舞羽]:「頑張ろう」
[愛海]:「ええ」
[吹雪]:「――ところで日野、さっきから気になってたんだが、その手に持ってるの何だ?」
[愛海]:「ん? ああ、これね」
[舞羽]:「あ、そ、それ、ひょっとして――」
普段は大人しい舞羽が、急に大きい反応を示した。