カホラルート・アモロサメンテ(1)
個別ルートも半分を過ぎました。
もうしばらくお付き合いください。
12月27日(月曜日)
[場所:海風のピアノ近辺]
――そして、昨日の続きをしている俺たち。どうやら地面に手掛かりらしいものは見当たらなかった。探索場所を切り替え、今は生い茂った木々を中心に見ていっている。
[カホラ]:「何もないところから何かを見つけるって、こんなに大変なことだったのね」
[吹雪]:「同感。案外簡単に見つかるかもって考えてた俺はすごく浅はかだったよ」
[カホラ]:「大丈夫よ、私も思ってたから」
[吹雪]:「冷静に考えたら、そんなことあるわけないんだよね。だって、見つかってないんだから」
何てこともない。
[カホラ]:「でも、それを発見できたら、かなりこの島としては大きな発見になるわよね」
[吹雪]:「ひょっとしたら、カホラが未来の歴史の教科書に載ってるかもしれないね」
[カホラ]:「そ、そこまで大きなことかしら?」
[吹雪]:「俺はそうなったら鼻高々だけどね、歴史に名を連ねた人と付き合ってるって自慢できるし」
[カホラ]:「じ、自慢したいの? 吹雪は」
[吹雪]:「それも悪くないかもしれない」
[カホラ]:「以前仲間内に知られた時はあんなに慌ててたのに」
[吹雪]:「あれから考えが変わったみたいで、カホラを恋人にできたってことは実はすごいことなんじゃないかって思うようになってきたんだ」
[カホラ]:「別にすごいことでもないでしょう?」
[吹雪]:「だって、容姿端麗で勉強できて、それでいて優しいでしょう? 付き合いたいって思う男はたくさんいるはずだから。そのたくさんの可能性がある中で、カホラは俺を選んでくれたんだから。これは相当すごいことだよ」
[カホラ]:「……一見可能性はたくさんあるように見えるけど、私がその可能性から吹雪を選んだのは必然のようなものだったわよ」
[吹雪]:「え?」
[カホラ]:「確かに、男の子から声をかけられることはあったけど、私、異性と話すのはそこまで上手じゃないの。テキトーに返事をして、席に戻ることがほとんどだったわ。その時点で、仲の良い異性は一気に絞られるでしょう?」
[吹雪]:「……ちょっと意外だな、それは」
[カホラ]:「突然話しかけられるってことになかなか慣れることができなくてね。そういう場が設けられてるなら問題ないんだけど」
[吹雪]:「気持ちはすごく分かるよ」
俺も、突然のことに慣れることはできない。
[カホラ]:「だから、普通にしゃべれる異性の友人は5人もいなかったのよ。で、他の男の子はみんな部活が違う……ここまできたらもう確実でしょう?」
俺の目を見ていつもの微笑み。
[吹雪]:「嫌われるようなことをしなくてよかった」
[カホラ]:「嫌われるようなことなんてできないでしょう? 吹雪は」
[吹雪]:「故意的には、ね。……無意識では、あるかもしれない」
[カホラ]:「それは、そうかもね」
[吹雪]:「え?」
[カホラ]:「吹雪、ちょっと鈍感なところがあるから」
[吹雪]:「え? 例えば?」
[カホラ]:「……これは言っても分からないと思うから言わないでおくわ。言ったら言ったで、困惑するだろうから」
[吹雪]:「?」
[カホラ]:「気にしないでいいわ」
[吹雪]:「何なんだ? 一体……」
[カホラ]:「そんなことよりも、探すことに集中しましょう。今日は以前の遅れを取り戻すことを目標に来たんだから」
[吹雪]:「ああ、そうだね」
誤魔化された感じもするけど……まあいいか。
……………………。