カホラルート・アマービレ(15)
[吹雪]:「呼んだほうがいいのかなって思ったんですけど、やっぱり先輩は年上だし、急に下の名前で呼んだら、ちょっとおかしくなるかなって不安だったので」
[カホラ]:「呼ぶに呼ぶことができなかった?」
[吹雪]:「はい」
[カホラ]:「気にすることなんてないのに」
[吹雪]:「でも、好きな人でもあり、尊敬する人でもありますから」
[カホラ]:「気持ちは分かるけどね、私が吹雪の立場だったら同じところで悩んでる気はするし。でも、別に不安になることなんてないよ。むしろ、恋人同士なんだから、そういう観念は排除して考えてもいいと思うわよ。というわけで、一回私のこと、名前で呼んでみて? どんな感じになるのか気になるから」
[吹雪]:「い、今ですよね」
[カホラ]:「ええ、今よ」
[吹雪]:「わ、分かりました」
何でだろう、本人の許可が出ているのにちょっと緊張するな。
[吹雪]:「い、いきます」
[カホラ]:「うん」
[吹雪]:「……か、カホラ」
[カホラ]:「…………」
[吹雪]:「ど、どうですか?」
[カホラ]:「うん、すっごくキュンってきちゃった」
そしてクスクスと笑い出した。
[カホラ]:「これからは、名前で呼んでくれるかしら? 名前で呼んでもらえるほうが、恋人なんだって感じがするから」
[吹雪]:「わ、分かりました」
[カホラ]:「あ、敬語も禁止。名前で呼んでるのに丁寧語っていうのは余所余所しいでしょう?」
[吹雪]:「さ、際ですか」
[カホラ]:「ええ、よろしく」
[吹雪]:「ま、参ったな……」
少しずつ慣れていくしかないか。でも、確かに敬語じゃないほうがちょっと近づいた感じはするかもしれない。
……これからの課題だな。
[吹雪]:「つ、続けるね、カホラ」
[カホラ]:「うん」
変に意識することを防ぐために、俺は肩を揉むことに心血を注いだ。
[カホラ]:「ん、そこ、気持ちいい」
[吹雪]:「確かに、ここは凝ってるみたいだね」
[カホラ]:「そういうのも分かるんだ」
[吹雪]:「何となくだけどね、ちゃんと柔らかくなるようにするよ」
カホラがそう言った部分を重点的に指圧していく。
[カホラ]:「はあ、それ、すごく良い感じ」
感想を耳にしながら、俺は作業に没頭する。
…………。