カホラルート・アマービレ(14)
[カホラ]:「寂しくはない?」
[吹雪]:「ないって言えば嘘になりますけど、泣きたくなるほどではないです。今は、みんなもいるし、それに――先輩が傍にいてくれますから」
[カホラ]:「嬉しいこと言ってくれるわね」
[吹雪]:「本当のことですよ、お世辞のつもりはありません」
[カホラ]:「寂しくさせないように、頑張らないとね」
[吹雪]:「今のままの先輩でいてくれるだけで、俺は満足ですよ」
[カホラ]:「そう言ってくれるのはありがたいんだけど、どうせなら吹雪の期待以上の私を見せたくなるのよね」
[吹雪]:「き、期待以上ですか?」
[カホラ]:「具体的にどうすればいいのかは分からないけど、吹雪の目に良く映りたいなって思うの」
[吹雪]:「その気持ちだけで俺は十分ですけど」
心の底から、今のままの先輩でも魅力的だと言えるからな。
[吹雪]:「自分に自信をもっていいと思いますよ? 俺が保障します」
[カホラ]:「――日に日に口が上手くなってきてるわね、吹雪」
[吹雪]:「先輩の前でしか、こんなことは言いませんよ? 俺は」
[カホラ]:「大丈夫、ちゃんと分かってるから、ふふ」
そういう先輩も……と言いたいところだけど、笑顔がかわいかったからそれは保留することにした。
[吹雪]:「ちょっと指圧しますね」
[カホラ]:「ええ」
親指に力を込めて、先輩のツボを突いていく。
[カホラ]:「ん、気持ちいい」
[吹雪]:「それは何よりです」
[カホラ]:「ん~……」
[吹雪]:「何ですか? 先輩」
急に振り向き、上目遣いで俺を見てきた。
[カホラ]:「ちょっと前から思ってたことなんだけど」
[吹雪]:「はい」
[カホラ]:「吹雪はさ、いつまで私のことを『先輩』って呼ぶの?」
[吹雪]:「え?」
[カホラ]:「ほら、私たち付き合ってるでしょう? 私は吹雪って下の名前で呼んでるけど、吹雪は先輩って呼んでるでしょう? 別に嫌ってわけじゃないんだけど、名前で呼んではくれないのかなーってちょっと疑問に思って」
[吹雪]:「あー、それですか」
[カホラ]:「そういう反応するってことは、吹雪も悩んでたってこと」
[吹雪]:「そうですね、悩んでましたね」
隠してもしょうがないから素直に言うことにした。