カホラルート・アマービレ(13)
[吹雪]:「はあ……」
腰をトントンと叩きながら地面とひたすら睨めっこを続ける。この体勢もちょっと疲れてきたな。
[カホラ]:「今の行動、おじいちゃんみたいよ? 吹雪」
[吹雪]:「今ならおじいちゃんの気持ちが理解できる気がします」
[カホラ]:「ふふ、そうね。――ふう、ちょっと疲れたわね」
そう言いながら先輩も自分の腰を叩いた。どうやら先輩も、俺と同じ症状が出ているらしい。
[吹雪]:「休憩しましょうか?」
[カホラ]:「それがいいわね、このまま続けたら、この体勢のまま固まっちゃいそうだし」
先輩はゆっくりと上体を起こして立ち上がった。
[カホラ]:「何だか、一気に景色が広がったわね」
[吹雪]:「――よいしょ」
グキッ。
[吹雪]:「うっ!?」
[カホラ]:「だ、大丈夫? すごい良い音がしたけど」
[吹雪]:「た、多分大丈夫です。折れてはいないはずです」
[カホラ]:「そ、そうよね。折れてたら悲鳴くらいは上がるはずだし」
ちょうどいい休憩ポイントを見つけ、俺たちは腰を下ろした。
[カホラ]:「四足歩行は楽じゃないってことを再認識したわ」
[吹雪]:「二足歩行が一番ですよ、やっぱり」
[カホラ]:「そうね。――はあ」
ため息をついて、肩をトントンと叩いた。
[吹雪]:「よかったら揉みましょうか? 肩」
[カホラ]:「吹雪も疲れてるでしょう? 無理しないでいいわよ」
[吹雪]:「先輩の疲れてる姿を見てるほうが俺にとっては無理です。やらせてください」
[カホラ]:「――じゃあ、お願いしようかしら」
[吹雪]:「任せてください」
先輩の背中に回り込んで、肩に手を伸ばす。
[カホラ]:「ん……上手ね、吹雪」
[吹雪]:「昔、よく家族にやってましたから。その感覚がまだ指に残ってたみたいです」
[カホラ]:「そっか、親孝行息子だったのね、吹雪は」
[吹雪]:「その頃は親孝行ってことを知らなかったんで、ただ喜んでもらいたい一心でやってたというか」
[カホラ]:「今も、世直しの最中だったかしら? 吹雪のお父さんとお母さんは」
[吹雪]:「そうですね、連絡はないですけど、多分どこかで頑張ってると思いますよ」
聞く人によっては、馬鹿馬鹿しいことかもしれない。その気持ちも分からなくない、何故なら世直しだ、当て所のない旅、そう呼ぶこともできなくはない。でも、両親は本気でこの世界の平和を守るために、確固たる決心で旅立って言ったんだ。だから俺も、本気で応援する義務がある。