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ソプラノ  作者: BAGO
カンタービレ
25/1013

カンタービレ(1)


12月3日(金曜日)


 [場所:学園長室]


[セフィル]:「――というわけで、私が学園長だ。まあ、本名を言っておけば、セフィルだ。沢渡・エレディ・セフィルだ」

[吹雪]:「沢渡……? え? 先輩?」

[カホラ]:「うん、実はね」

[舞羽]:「そ、そうだったんだ」

[吹雪]:「学園長が、カホラ先輩のお母さんだったのか」

二年も同じ部活で過ごしていたのに全く気付かなかったぞ。

[カホラ]:「言ってなかったかしら?」

[吹雪]:「初耳ですよ」

[カホラ]:「ごめんね、別に言う必要もないかなって思って。先入観持たれるのも少しイヤだしね」

[セフィル]:「そんなことでそんな風に見る生徒は放っておけばいいんだ。気にすることはない」

[カホラ]:「まあ、そうなんだけどね。お母さん、威厳あんまりないし」

[セフィル]:「何を言うんだ。時折お茶目をするだけだぞ」

[カホラ]:「それがいけないのよ」

[セフィル]:「そうなのか? それは困った……」

確かに、言われてみると親子って感じがするな。顔が結構似てる気がする。

[セフィル]:「それにしても、こうしてみると見知った顔ばかりだな。須藤に繭子に杠にカホラ、そして大久保だな」

[俺&舞羽]:「ど、どうも」

[聖奈美]:「知っていただけて光栄です」

[繭子]:「まさかワタシが選ばれるなんてな~」

[セフィル]:「そうだな。教師で選ばれるのは、かなり久しぶりかもしれんな」

[繭子]:「どうしてワタシだったんでしょうか~?」

[セフィル]:「それは決まってるだろう、四季のピアノに気に入られたからだ」

[繭子]:「それしかないですよねー」

[セフィル]:「繭子はピアノに選ばれたんだ、たくさんいる学園の者たちの中でな。しっかりしなければならないぞ」

[繭子]:「はい」

[セフィル]:「で、こっちは生徒会長だな。お前の活躍はよく知ってるぞ」

[聖奈美]:「お褒めに預かり光栄です」

[セフィル]:「そんなに堅くなるな、もっと柔らかく接してくれ」

[聖奈美]:「いえ、しかし、この学園で一番偉いわけですし」

[セフィル]:「何を言う、お前とは立場上ちょくちょく顔を合わせているじゃないか。こんなガチガチな会話をする仲じゃないはずだ」

[聖奈美]:「わ、分かりました。でも、敬語は使わせてください、これはケジメですので」

[セフィル]:「うん、頼んだぞ」

[聖奈美]:「はい」

[セフィル]:「そして、魔法研究部の二人だな」

[舞羽]:「(ペコリ)」

[吹雪]:「はじめまして」

[セフィル]:「うん、君たちの作品は評判がいいぞ。完成度が高いようだな、カホラからよく聞いてるぞ」

[吹雪]:「そう言ってもらえると嬉しいです」

[舞羽]:「ありがとうございます」

[セフィル]:「また新しいのが完成したと聞いてるが」

[吹雪]:「あ、はい、プラネタリウムを作ってみました」

[セフィル]:「プラネタリウム? それはすごいな。一度見てみたいものだ」

[舞羽]:「部室にありますから、よければ見にいらしてください」

[セフィル]:「それは楽しみだ。もし暇があれば、私の欲しい物を作ってほしいな」

[吹雪]:「学園長、何か欲しい物があるんですか?」

[セフィル]:「うむ、ある」

[吹雪]:「それは一体?」

[セフィル]:「車だ」

[吹雪]:「いやいやいや、ちょっと待ってください。車はちょっと無理がありますよ」

[セフィル]:「む? そうか? 君たちなら出来そうな気がするんだが」

[舞羽]:「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、多分学園生活中には終わらないです」

[セフィル]:「そうか、ではミニカーでもいいぞ」

[吹雪]:「それは玩具ですから、学園長乗れなくなりますよ」

[セフィル]:「確かにそうだな。じゃあ何でもいいから私に作ってくれ」

そんなアバウトな……。

[セフィル]:「今から楽しみにしているぞ」

[カホラ]:「お母さん、吹雪たちが作りたい物とかを優先させてあげようよ」

[セフィル]:「うん、それでいい。それを私が奪うというわけだ」

[カホラ]:「それって犯罪じゃないの?」

[セフィル]:「ギリギリ冤罪だろう」

[カホラ]:「ギリギリって……」

[セフィル]:「まあ暇があったらでいい。考えてみてくれ」

[カホラ]:「はい、分かりました」

[セフィル]:「さて、全員との面識を確認したところで、そろそろ本題に入ろうか」

[全員]:「はい」

[セフィル]:「一応聞いておくが、ピアニスト、ハーモニクサーを辞退したいって者はいないよな? うん、ないようだな。まあ不安は持ってる者が多いとは思うが、学園側が全力でサポートするから、あまり気を張らずに望んでほしい」

[全員]:「はい」

[セフィル]:「君たちのやるべきことだが、大体は把握してるはず。でも、今一度説明しておこう。君たちがしなければならないことは、ピアニストはピアノを弾き、ハーモニクサーはそれをアシストする。ただ弾けばいいわけではない。一番大事なことは、ピアノと心を一つにすること。ピアノと波長を合わせることで、ピアノに願いが届いて、来年も平穏な四季を送らせてもらうんだ」

[聖奈美]:「波長を合わせるっていうのは、具体的にはどういうことなんですか?」

[セフィル]:「言い表すのは少々難しいんだが、ピアノの気持ちになることが大事だろうな」

[聖奈美]:「気持ちになる、ですか?」

[セフィル]:「うむ、四季のピアノは生きている。私たちと同じで心がある。気持ちのいい弾きかた、気持ちが悪い弾きかた、良い悪いがあるだろう。ピアノが心地良いメロディーを奏でてやるのが、君たちがしなければならないことだな」

[舞羽]:「なるほど、生き物なんですね」

[セフィル]:「まあそうと言うほうが自然だろうな。君たちはピアノに選ばれたわけだ。

それは即ち、ピアノに心が宿ってるってことと同義だろう」

[吹雪]:「そうですね」

[セフィル]:「ピアノは四つ存在する。春を司る『桜花のピアノ』、夏を司る『海風のピアノ』、秋を司る『紅葉のピアノ』、そして冬を司る『風花のピアノ』。この四つを大久保弟以外の四人に弾いてもらう」

[繭子]:「名前からして、冬のピアノはふーちゃんが弾くのが妥当そうなのにな~」

[吹雪]:「名前で決めんな、名前で」

[聖奈美]:「でも、大久保が弾いたら冬が大変になるんじゃないですか? 先生」

[繭子]:「あーそっかー。常に豪雪になっちゃうかな~?」

[吹雪]:「だから、名前で勝手に想像すんな。なりたくてこの名前になったんじゃないんだよ」

[カホラ]:「珍しい名前よね、吹雪って」

[吹雪]:「まあ、あんまりいないみたいですけど……って今は俺の話じゃあないでしょう」

話が脇道に反れてってる。

[吹雪]:「俺のことはどうでもいいから。すいません、学園長」

[セフィル]:「うむ、でも、私も少々気になるな。大久保弟の名前は」

[吹雪]:「ええ~!?」

[セフィル]:「それなりに学園長生活は送ってきたが、吹雪という名前は耳にしたことがない。君が初めてだ」

[繭子]:「でしょ~? 学園長は分かってるね~」

[セフィル]:「繭子、弟のネーミングの由来は知らないのか?」

[繭子]:「うーん、正直聞いたことはないです~。でも、吹雪だから勇ましいってことなんじゃないのかなーって思います」

[セフィル]:「なるほど、まあそう考えるのが妥当だな」

[繭子]:「ふーちゃんにはこの名前が合ってると思いますよ、ワタシー」

[セフィル]:「だそうだ、モテモテだな、弟」

[吹雪]:「いや、違うと思いますけど……」

[セフィル]:「うむ、よく考えてみると、このメンバーには結構珍しい名前の者が多いな。須藤の名前も、私は初めてみるぞ」

[舞羽]:「そうですか?」

[セフィル]:「うん、舞羽か。ありそうでなかった名前だ」

[舞羽]:「そうですね、たまに、まいはじゃなくてまうって読まれちゃいますけど」

[セフィル]:「でも、素敵な名前じゃないか。須藤に似合っているぞ」

[舞羽]:「ありがとうございます」

[セフィル]:「杠は、漢字が少々難解だな。これでみなみと読ませるのだろう?」

[聖奈美]:「はい。聖と書いて「み」とは読みませんからね」

[セフィル]:「そうだな、でも、何か意味があって付けられたのだろう?」

[聖奈美]:「親の名前にも同じように聖の字が入っているので、それを受け継いだのだと思います」

[セフィル]:「なるほど、親の字を受け継いだわけか」

[聖奈美]:「はい、結構間違われるのでたまに、はぁってなりますね」

[セフィル]:「そうか、でも君にあったいい名前だと思うぞ? 似合っている」

[聖奈美]:「本当ですか? ありがとうございます」

[セフィル]:「うむ、自信を持ってもいいだろう」

[聖奈美]:「はい」


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