カホラルート・アマービレ(10)
[セフィル]:「そ、それは……しかも5枚も!」
[カホラ]:「お母さんから没収した時に、予備で取っておいたのよ。欲しいでしょう? 前回は一枚しか食べてないはずだから、食べ足りてるわけはないわよね?」
[セフィル]:「く、くれるのか? それを」
[カホラ]:「あげてもいいわよ? 私たちを送迎してくれたらね」
[セフィル]:「く、そのビスケットで私を釣るというわけか。わが娘ながら何とも恐ろしい手段を」
[カホラ]:「ふふ、用意周到と言ってほしいわね」
なるほど、これが先輩の秘策というわけか。確かにすごく効果的な方法だ。学園長から没収した時からこの方法を考えていたとしたら、先輩はすごい策士と言える。
[カホラ]:「どう? 悪い取引じゃないはずよ? 今日のお母さんのティータイムがとってもリッチになるチャンスよ」
[セフィル]:「う……欲しい、しかし……その送迎の時間は惜しい……」
[カホラ]:「そうやって悩んでいる方が、よっぽど惜しいと思うわよ? スパっと決めちゃったほうがいいわよ?」
更に誘いかける甘い言葉、これにはさすがに学園長も――。
[セフィル]:「……分かった、送迎するから、そのビスケットを私に譲ってくれ」
[カホラ]:「ふふ、交渉成立ね」
先輩は成功とばかりに、俺に向かってウインクをした。
[カホラ]:「じゃあ、とりあえず3枚あげるわ」
[セフィル]:「残りの2枚は?」
[カホラ]:「迎えに来た時にあげるわ、全部渡しちゃうと、迎えに来なくなる可能性もあるからね」
[セフィル]:「実の母を信頼できないというのか?」
[カホラ]:「保険のようなものよ、信頼してないわけじゃないわ」
[セフィル]:「……そういうところも、わが娘というべきか」
学園長は、首をかしげて唸っていた。とにかくこれで、四季のピアノのところに連れて行ってもらえるぞ。
[セフィル]:「それで? どこの神殿に連れて行けばいいんだ?」
[カホラ]:「そうね、海風のピアノのところにお願いするわ。その周辺を探索するから」
[セフィル]:「探索ということは……ストーンサークルを探すつもりか?」
[カホラ]:「ええ、そうよ」
[セフィル]:「次の手掛かりを見つけたのか?」
[カホラ]:「その逆、手掛かりが見つからないから、それなら一度現地で探したほうが何かあるんじゃないかと思ったの」
[セフィル]:「なるほど、……そう簡単には見つからないかもしれないが、行動することに意味があるはず、ということか」
[カホラ]:「そういうこと」
[セフィル]:「私も、そういう物事の考え方は好きだぞ。頑張ってくれ、応援してるぞ」
[カホラ]:「ありがとう」
[セフィル]:「吹雪、カホラのこと、よろしく頼むぞ」
[吹雪]:「はい、もちろんです」
[セフィル]:「では行こうか。二人とも、前回と同じように」
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