カホラルート・アマービレ(9)
[場所:学園長室]
[カホラ]:「お母さん、お邪魔するわよ?」
[吹雪]:「失礼します」
カホラ先輩の後ろを、俺はついていく。当たり前だけど、学園長室には学園長が在籍していた。
[セフィル]:「ん? カホラに吹雪……噂のカップル二人組か」
[カホラ]:「今何をしてるところ?」
[セフィル]:「パッと見れば分かるだろう? 仕事の真っ最中だ」
机の上には、結構難しそうな書類がたくさん開かれている。
[セフィル]:「今年の総決算のようなものだ。年末まで終わさないといけないんだ。学園長もなかなか楽じゃないよ、全く」
[カホラ]:「私が入学する前からやってるんだから、そろそろ慣れる頃じゃないの?」
[セフィル]:「そう上手くいかないのが人生なんだよ、毎年毎年しなくてはいけないことは微妙に変わるからな。私は、それに対する順応力が少々不足しているようだ」
[カホラ]:「じゃあ、頑張って身につけないとね」
[セフィル]:「うむ。――それで、二人はどうしてここに来たんだ? 用事がないのなら、私は仕事をしなくてはいけないから」
[カホラ]:「もちろん、お母さんにお願いがあるから来たのよ。なかったらここには来ないわ」
[セフィル]:「……それはそれで寂しい気もするが」
[カホラ]:「お願いっていうのは、私たちを神殿の方に送っていってほしいの。移動にかけてる時間がもったいないから」
[セフィル]:「つまり、私に送迎してほしいと」
[カホラ]:「そういうこと」
[セフィル]:「してあげたいのは山々なんだが、私も今暇じゃなくてな、二人で歩いて行ってもらえるとすごく助かるんだが」
[カホラ]:「ワープにそこまで時間はかからないでしょう? 行って戻ってくるのに10分もかからないじゃない」
[セフィル]:「そうは言ってもだな、集中力が切れては仕事も捗らないだろう」
[カホラ]:「普段そこまで集中して仕事ができてるの?」
[セフィル]:「さらっと失礼なことを……これでもお母さんは学園で一番若いんだぞ? 集中して仕事をしないと追い出されてしまうぞ」
[カホラ]:「その集中力があるのなら、ちょっとくらいの時間なら取り返せるでしょう? お願いよ」
[セフィル]:「うーん、そうは言ってもな……」
[カホラ]:「ふふ、じゃあ、これならどうかしら?」
先輩は、ポケットからあるものを取り出した。それは、沢渡家のキーアイテムでもある、あのチョコビスケットだった。