カホラルート・ピウ(14)
[カホラ]:「実際にやってみると、結構いいものね、こういうのも」
[吹雪]:「漫画とかだとよくありますけど、実際にやる機会はあまりないですからね」
[カホラ]:「でも、今は違うわよ。しようと思えば、これからいつでもできるんだから」
[吹雪]:「そうですね」
[カホラ]:「吹雪の手、暖かいわね」
[吹雪]:「先輩の手は、ちょっと冷たいですね」
[カホラ]:「ごめんね、ピアノを弾いている時は暖かかったんだけど」
[吹雪]:「全然平気です。それに、手が冷たい人は心が暖かくて優しいって聞いたことがありますから」
[カホラ]:「あ、そうなんだ。どこで調べたの?」
[吹雪]:「以前、誰かから聞きました。信憑性があるか分からないですけど」
[カホラ]:「言ってもらえるだけで嬉しいから、構わないわよ」
[吹雪]:「……じゃあ、そろそろ」
[カホラ]:「ええ、……ドキドキするわね」
[吹雪]:「は、はい」
[カホラ]:「私の心臓の音、聞こえちゃったりしてない?」
[吹雪]:「今のところは。俺のほうはどうですか?」
先輩に負けず劣らずドキドキしているはずだ。
[カホラ]:「大丈夫。まだ聞こえてきてないわ」
[吹雪]:「よかった。――じゃあ改めて、先輩、顔を少し上に傾けてくれませんか?」
[カホラ]:「こうでいい?」
言われたとおりにしてくれる。
[吹雪]:「そしたら、目を閉じてください」
[カホラ]:「うん」
先輩は瞼を閉じた。後は、俺が唇を触れ合わせるだけだ。――緊張はさっきからしてるけど、不思議と体は言うことを聞いてくれた。
[カホラ]:「んぅ……」
吸い込まれるように、俺の唇は先輩の唇に触れ合った。
[カホラ]:「ん……」
隙間なくピッタリと合わさる口。息をするのも忘れてしまいそうというのはこのことだろう。先輩の唇はとても柔らかくて、それにとても良い香りがする。ずっとそうしていたかったけど、息が続かず、自然と唇は離れた。