アニマート(6)
……………………。
[吹雪]:「ようし、終了」
全ての整理と綴じ込みが終了した。
[ダルク]:「お疲れさま」
[吹雪]:「ダルクもな」
[ダルク]:「うん。ふう」
ダルクは急にキョロキョロとし出す。
[吹雪]:「どうしたんだ? ダルク」
[ダルク]:「え? ううん。ちょっと座りたいなーって思って」
ああ、なるほど。ずっと浮いてるのも疲れるんだろうな。だが、ここら辺、埃が多いから躊躇ってるわけか。
[吹雪]:「ダルク、俺の頭使いな」
[ダルク]:「え、ええ!? 吹雪の?」
[吹雪]:「ああ、別に構わないぞ。座る場所ないんだろ」
[ダルク]:「そ、そうだけど、悪いよ」
[吹雪]:「本人が了承してるんだぜ? 気にすんなって。それに、使い魔って言ったら頭の上が相場だろう?」
[ダルク]:「そ、そうなのかな?」
[吹雪]:「というか、俺から頼む。乗ってみてくれ」
[ダルク]:「う、うん。じゃあ」
ダルクはふわふわと俺の頭上にやってくる。そして――。
モフ。俺の頭に乗った。
[吹雪]:「おおっと?」
[ダルク]:「あ、大丈夫?」
[吹雪]:「ああ、全然。うん、なるほど、こんな感じなのか」
[ダルク]:「え? 何が?」
[吹雪]:「うん、よく使い魔って頭の上に乗ってるイメージが俺の中ではあってな。一度味わってみたかったんだよ」
[ダルク]:「そうなんだ」
[吹雪]:「思ったよりも、重くないものだな」
[ダルク]:「まあ、吹雪たちみたいに大きくないからね」
[吹雪]:「それもそうか。どうだ? 俺の頭」
[ダルク]:「うん、すごくいい感じ。ほっとするよ」
[吹雪]:「ならよかった。しばらくそこにいていいからな」
[ダルク]:「ありがとう、吹雪」
モフモフ。
[ダルク]:「ど、どうかした?」
[吹雪]:「いや、ちょっと触ってみたく。ふかふかだな、ダルクは」
[ダルク]:「そ、そうなのかな? 聖奈美にもよく言われるよ」
[吹雪]:「そうなのか?」
[ダルク]:「うん、冬の日とかは、よく抱きしめられてたよ。寒いからって言って。湯たんぽ代わり、かな?」
[吹雪]:「なるほど、気持ちは分かるな。現にダルクは暖かい」
[ダルク]:「女の子はただだけど、男の子からはお金取りますよ?」
[吹雪]:「何ー? それは困ったな」
[ダルク]:「えへへ、タッチまでなら許すよ」
[吹雪]:「よし、なら今のうちに体温を奪っておこう」
[ダルク]:「あはは、くすぐったいよ、吹雪」
[聖奈美]:「ダルク、今年度の補修費の金額の資料――な、何やってるのよあんたたち!」
[吹雪]:「おおっ!?」
[ダルク]:「きゃ!?」
[聖奈美]:「お、お、大久保吹雪、あたしの使い魔に何してくれてるのよ!」
[吹雪]:「は? い、いや、ただ少し休憩してただけだぞ?」
[聖奈美]:「嘘おっしゃい、今、ダルクの体触ってたでしょう? あたしは見たわよ。この変態、スケベ」
[吹雪]:「ち、違う。それは誤解だ」
[聖奈美]:「何が誤解なのよー。しかもダルクを自分の頭の上に乗せたりして、親密な関係になりすぎなのよあんたたち。キー!」
[吹雪]:「お、落ち着け。話せば分かる」
[聖奈美]:「う~~~~~~!」
[吹雪]:「やばい、何だかおかしくなってる」
[ダルク]:「聖奈美、誤解なんだって。私の話聞いてよ」
[聖奈美]:「ダルク、あんたは被害者なのよ? 何こいつの肩持とうとしてるのよ!」
[ダルク]:「だからそれも違うんだって。今から話すから落ち着いてよ」
……………………。
[聖奈美]:「ふうん、だからそんなにじゃれてたのね? 二人で」
[ダルク]:「じゃれてたって……私は吹雪の好意に甘えただけだよ」
[聖奈美]:「むううう……」
[吹雪]:「な、何だよ?」
[聖奈美]:「変態」
[吹雪]:「な、何でだよ。誤解は解いただろ?」
[聖奈美]:「あなた分かってるでしょ? ダルクはメスの使い魔なの。それにタッチしてるんだから、それはもう完全な痴漢よ、痴漢」
[吹雪]:「痴漢て、ダルクからオーケーもらったぞ、俺は」
[聖奈美]:「もらったってダメ! あなたは男でダルクはメス、それは変わらない事実なんだから」
[ダルク]:「聖奈美、そんなに怒らないでよ。私が悪かったんだよ、吹雪は悪くないの」
[聖奈美]:「だから何でそこまで大久保の味方をするのよダルクは」
[ダルク]:「だって、吹雪は友達だもん。当然じゃない」
[聖奈美]:「……なんだから」
[ダルク]:「へ? 何?」
[聖奈美]:「ダルクはあたしの使い魔なんだから。あたしより仲良くなっちゃダメ!」
[吹雪]:「…………」
[ダルク]:「…………」
[聖奈美]:「――しまった。あたしとしたことが! ――キッ!」
[吹雪]:「うっ……」
[聖奈美]:「今、何か聞いた?」
[吹雪]:「え?」
[聖奈美]:「聞いてないわね?」
ここは聞いてないと言うしかあるまい。俺は首を縦に振った。
[聖奈美]:「ならいいわ、とにかく、今後は軽率な行動は慎むことね。ひどかったら、氷魔法で氷づけの刑に処すわ」
[吹雪]:「あ、ああ。気をつける」
[聖奈美]:「ふ、ふん!」
踵を返して杠は向こうに戻っていった。
[吹雪]:「なあ、今のってさ」
[ダルク]:「うん、あれだよね」
これからは、時と場所を選んだほうがよさそうだな。杠にあんな一面があったとは、ちょっとびっくりした。
[吹雪]:「ダルク、頑張れよ」
[ダルク]:「う、うん。もちろんだよ」
生徒会での出来事だった……。