カホラルート・ピウ(8)
[セフィル]:「――よし、今日はこれで終了」
[カホラ]:「え? もう?」
練習が始まって一時間余りで、学園長はそう言った。先輩が聞き返すのも当然か。
[セフィル]:「何か不満か?」
[カホラ]:「不満ってわけじゃないけど、ちょっと早すぎない?」
[セフィル]:「私は最初から一時間で終える予定だったから、ドンピシャだと思っているんだが」
[カホラ]:「でもさ」
[セフィル]:「さっきも言っただろう? 息抜きも必要だと。今日は何も言わずにここで練習を終えておこうじゃないか、カホラ」
[カホラ]:「うーん……」
[セフィル]:「吹雪、後は任せたぞ? それでは、私は失礼する」
[カホラ]:「あ、ちょっと」
[セフィル]:「ふっふっふ、さらばだ」
学園長は、その場から姿を消した。
[カホラ]:「どうしてわざわざワープで出ていったのかしら」
[吹雪]:「かっこよく去りたかったのかもしれませんね」
[カホラ]:「もう……」
[吹雪]:「今日は好意に甘えておきましょう。今日くらいならきっと問題ありませんから。俺が保障します」
[カホラ]:「吹雪が保障してくれるんだ」
[吹雪]:「聞いている限り、ほぼ先輩のスタイルは確立されている気がするので」
[カホラ]:「そう?」
[吹雪]:「はい」
[カホラ]:「……どっちにしても、お母さんもいないし、終わるしかないか。はあ、まだ準備ができてないのに」
[吹雪]:「準備?」
[カホラ]:「う、ううん、何でもないわ。……どうしよっか? 時間が結構余ってるけど」
[吹雪]:「あ、じゃあ、屋上に行きませんか?」
[カホラ]:「屋上?」
[吹雪]:「はい。唐突ですけど……ちょっと先輩に、お、お話があるので」
意を決してそうお願いをした。
[カホラ]:「お、お話?」
[吹雪]:「はい、いいでしょうか?」
[カホラ]:「ええ、いいわよ。その……私も吹雪に話があったから」
[吹雪]:「え?」
[カホラ]:「と、とにかく行きましょう? 開いてるといいわね」
先輩は足早に教室の扉へと向かう。何だかせかせかしているように見えるのは気のせいか? いや、今はそれどころじゃない。いいか、俺、ちゃんと言うんだぞ。緊張で固まりかけている足を動かし、先輩の後を歩いた。
…………。