カホラルート・ピウ(4)
[場所:図書室]
不思議な記号の解析を図書室の先生に頼んでから数10分。
[吹雪]:「もう少しでしょうか?」
[カホラ]:「どうかしらね、まあ気長に待ちましょう。こっちも読まなきゃいけないし」
[吹雪]:「そうですね。でも先輩、よくそんな難しい本をすらすらと読めますね」
母国の言語しか分からない俺に、昔の文献など読めない。
[カホラ]:「そこまですらすらとは読めてないわよ。途中で立ち止まることだってあるしね」
[吹雪]:「それでも読めるってだけで、俺はすごいと思います」
[カホラ]:「吹雪も努力すれば読めるわよ」
[吹雪]:「残念ながら、難しい文献を読みたいと渇望する自分が心にいないので、努力ができないんです」
[カホラ]:「まあ、気持ちはすごく分かるわ。目が痛くなるし、思うように前に進めないしね。でも、理解できた時の感動は一塩よ? それに至るまでにたくさんの労力を消費してるからね」
[吹雪]:「それは、そうでしょうね」
[カホラ]:「気が向いた時に読んでみるのもいいかもしれないわよ? 暇つぶしにはなるだろうから」
[吹雪]:「すぐに寝ちゃいそうな気もしますけど」
[カホラ]:「そういう用途で使うのも一考じゃない?」
[吹雪]:「い、いいんですか?」
[カホラ]:「使い方は人それぞれだからね。薬に頼るよりは良いと思うけど」
[吹雪]:「な、なるほど……」
考え方も人それぞれだな。
[カホラ]:「それにしても、昨日はすごかったわね」
[吹雪]:「はい、そうですね」
[カホラ]:「昨日だけでも、ものすごいたくさんの情報を手に入れることができたわ。去年に調べて分かったことを全て合わせても、昨日の情報量には足りないわ」
[吹雪]:「そんなにですか?」
[カホラ]:「ええ。去年は言ってしまえば暗中模索状態だったから。何から手をつければいいのかも分からないような感じ、ストーンサークルのスの字も出てこなかった」
[吹雪]:「でも、その積み重ねがあったから、今の成果につながってるんじゃないですか?」
[カホラ]:「そうかもしれないわね。改めて分かったのは、一人で調べるよりも何人かで力を合わせて進めたほうが格段に良いってことね。今回のことで、それがよーく分かったわ」
[吹雪]:「……何と言っていいのか」
[カホラ]:「ふふ、顔が赤いわよ」
[吹雪]:「す、すいません」
[カホラ]:「謝ることじゃないわよ」
[吹雪]:「と、とにかく、これからも精いっぱい頑張ります」
[カホラ]:「よろしくね? 上手くいけば、年が変わる前に、謎の解明ができるかもしれないから」
[吹雪]:「はい」
[図書室の先生]:「沢渡さーん」
[カホラ]:「終わったのかしら? 行ってみましょう」
[吹雪]:「はい」
俺たちは受付まで向かった。