カホラルート・ピウ(1)
12月24日(金曜日)
[場所:教室]
[翔]:「今日で学校も終わりだな」
[吹雪]:「そうだな」
[翔]:「――降ってきたな、雪」
[吹雪]:「冬だからな」
[翔]:「そりゃあ分かってるよ。……本当に、最近オレに対して冷たくないか? 吹雪ちゃん」
[吹雪]:「最近、季節と自分の態度を合わせてみようかって思ったのさ」
[翔]:「何故そんな決断を!? しかも合わせるってことは冬だから寒いじゃないか」
[吹雪]:「そうだな」
[翔]:「う、本当に寒い。やっぱり名前と一致してくるんだな、そういうところ」
[吹雪]:「黙れ、くたばれ」
[翔]:「うわあ、傷つくぜ~」
何だかここ2日、名前をネタにされる回数が多い気がするな。そういう時期なのか?
[愛海]:「うー、廊下はすごく寒いわね~」
[舞羽]:「そうだね。息、とっても白くなるし」
[吹雪]:「確か、今日の最低気温は氷点下になるらしいぜ」
[舞羽]:「ええ~!? 本当に? じゃあ湯たんぽとか用意したほうがいいかな?」
[吹雪]:「大丈夫じゃないか? 寝床は十分暖かいし、というかそれ以前に湯たんぽが人数分用意できないだろう?」
[舞羽]:「あ、そっか。……風邪引かないように気を付けないと」
[吹雪]:「そうだな、今躓いてる暇はないからな」
[舞羽]:「うん」
[翔]:「……あれ? 何でだろう? 急に目頭が熱くなってきた。どうしてだろう? おかしいな……すごく、吹雪の対応に温度差を感じる……」
[吹雪]:「気のせいだ」
[翔]:「ほら、だって端的すぎるもん! オレとの会話の時10文字以上口にしないもん! どうして? オレ今日何か悪いことした?」
[吹雪]:「祐喜、頼む」
[祐喜]:「うん、分かった」
祐喜はゆっくりと翔の前に立った。
[祐喜]:「翔、今日の昼ご飯のこと覚えてる?」
[翔]:「え? 昼ご飯?」
[祐喜]:「そして、吹雪のしてる恰好……ここまで言えば分かるよね?」
[翔]:「あ、ああ……」
[祐喜]:「そう。翔はしゃべることに夢中になって、お茶とお味噌汁同時に零して、吹雪のブレザーをビシャビシャにしちゃったんだ」
[愛海]:「確かに事故かもしれないけど、大久保くんが怒るのも無理ないわね~」
[舞羽]:「うん、そうだね」
[翔]:「う、でも……それは……」
[吹雪]:「それは、だと? ふざけるんじゃねぇぞ? くそ野郎」
[翔]:「ひぃ……!?」
[祐喜]:「ふ、二人とも、向こうを向いて目をつぶってたほうがいいかも」
[愛海]:「そうね。さあ、舞羽」
[舞羽]:「う、うん……」
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