カホラルート・プレスト(18)
[セフィル]:「ああ、これで以上か? 報告は」
[カホラ]:「そうね、後お母さんにしなければいけないのは……ペナルティね」
[セフィル]:「む、覚えていたか……」
[カホラ]:「私、記憶力はいいからね? ふふ」
今までにあまり見たことのない、先輩の邪悪な微笑みだった。
[セフィル]:「分かった、私も学園で一番偉い人間だ。腹を括ろう、だが……痛いのは勘弁してくれないか?」
[カホラ]:「心配しないで、痛くはないわ。いや、お母さんにとっては結構大きいダメージになるかもしれないけど」
[セフィル]:「私にとって?」
[カホラ]:「お母さんがこの部屋に閉まっているチョコビスケットを、私に譲って? もちろん袋ごと」
[セフィル]:「な、何~!?」
学園長は激しい動揺を見せた。
[セフィル]:「ちょ、ちょっと待ってくれカホラ。それは、本気で言ってるのか?」
[カホラ]:「ええ、もちろん」
[セフィル]:「い、いくら何でも全部はないんじゃないのか?」
[カホラ]:「それぐらいしないと、ペナルティにはならないでしょう」
[セフィル]:「だとしても……明日から私はティータイムに何を食べればいいんだ? これがないとティータイムがティータイムにならなくなってしまうじゃないか」
[カホラ]:「また買えばいいじゃない? そんなに高い商品でもないし」
[セフィル]:「買いに行く暇がないんだよ……」
[カホラ]:「ますますもらいたくなってきたわね。それくらいしないと、お母さんのためにならないし」
[セフィル]:「うっ……カホラも随分と残酷になったものだな」
[カホラ]:「ふふ、これがお母さんの子供なのよ? というわけで――これはもらっていくわね~」
先輩は迷うことなく引き出しを開けて、ビスケットの袋を取り出した。
[セフィル]:「い、一枚でいいから、置いていってくれないか?」
[カホラ]:「ダーメ、お母さんが出口を教えてくれなかったおかげで、こっちはかなりの疲労を蓄積しちゃったんだから。その疲れを癒すために、チョコビスケットは必要不可欠なの。私のお母さんなら、理解してちょうだい」
[セフィル]:「く……」
[カホラ]:「さ、行くわよ? 吹雪」
[吹雪]:「い、いいんですかね? 本当に」
[カホラ]:「大丈夫よ、さあ」
[吹雪]:「は、はい。じゃあ学園長、失礼しました」
[セフィル]:「カホラの鬼~」
[カホラ]:「何とでも言いなさい」
――そしてそのチョコビスケットは、舞羽たちに振る舞われた。みんな口を揃えて美味しいと言い、マユ姉は一人で3枚食べていた。先輩の作戦は、見事に成功したようだ。
…………ちなみにその後の夜の練習の後、資料を学園長からもらう際に、その報酬として先輩はビスケットを一枚渡していた。その時の学園長の顔は……今まで見たことのない表情だった。