カホラルート・プレスト(16)
[場所:学園長室]
[カホラ]:「お母さん、入るわよ」
[吹雪]:「失礼します」
今日二回目の、学園長室の訪問だ。
[セフィル]:「待っていたぞ、とりあえず座るといい」
[カホラ]:「じゃあ、遠慮なく」
お客様用の椅子に腰を下ろした。学園長も向かい側のほうに腰を下ろす。
[カホラ]:「お母さんは、魔法陣のことはよく知ってるはずよね」
[セフィル]:「もちろんだ、学園長だから、それなりの知識は豊富なはずだ」
[カホラ]:「じゃあ、模様に関しての説明は省いても問題ないわね。とりあえずは、これを見てちょうだい」
先輩は、学園長の前に二枚の用紙を差し出した。以前俺に見せてくれたものと先程摂ってきた情報の一部だ。
[カホラ]:「左が泉に隠されていたもので、右が地下に隠されていたものよ。保護魔法が集中的にかけられているわ」
[セフィル]:「うむ、そのようだな」
[カホラ]:「基本的には同じような構成ではあるんだけど、微妙に模様の数が違うのは、それぞれ耐性が異なっているからかしら?」
[セフィル]:「そう考えるのが妥当だろうな。ピアノには意思が宿っている、いくら似ていると言っても微妙な変化が出てもおかしくはないだろう」
[カホラ]:「じゃあ、そのような感じでまとめさせてもらうわ。後、お母さんに聞きたいことがあるのよ」
[セフィル]:「何だ? 遠慮なく言ってみるといい」
[カホラ]:「魔法陣の右端に小さく文字が彫られているのが分かるかしら?」
[セフィル]:「右端……これのことか?」
[カホラ]:「ええ、何かの記号のように見えるんだけど、これが何を表しているのか、お母さんは知らないかしら?」
[セフィル]:「うーん、確かにあまり見かけない形のものだな」
[カホラ]:「どちらのストーンサークルにも存在していたわ。何かの手掛かりにならないかなって思うんだけど」
[セフィル]:「うーん……私も初めてみる記号だな。ひょっとしたら、ストーンサークルを作った者がオリジナルで編み出した物、という可能性もあるかもしれないぞ」
[カホラ]:「言語の原点みたいな可能性は?」
[セフィル]:「それも無きにしも非ずだな。正直、私には判断しかねるから、図書館の先生に聞いてみるのが一番いいと思うぞ。ここで下手なことを言って混乱を招くのは避けたいからな」
[カホラ]:「そうね、分かったわ」
[セフィル]:「他には、何かあったか?」
[吹雪]:「はい、次は俺が。これを見てください」
俺はさっき見つけた情報を、学園長に見せた。
[吹雪]:「カホラ先輩と同時進行で、ストーンサークルの周りを調べていたんですが、その中に、この文字を見つけました」
[セフィル]:「これは、イニシャルだな」
[吹雪]:「はい。N・Pと書かれてると思うんですが、これを記したのは、以前名前を挙げたピアリーじゃないかって思うんです。四季のピアノについてここまで調べた人物は、ピアリーくらいしか思いつかないので」
[セフィル]:「確かにその可能性は高そうだな。しかし、そうなるとNの文字がどうしても気になってくるな」
[吹雪]:「俺たちもそう思ってるんですけど、それがよく分からなくて」
[セフィル]:「N、か。…………ピアリー、ピアリー。ん?」
[カホラ]:「どうしたの? お母さん」
[セフィル]:「いや、何かがここまで来てるんだが……なかなか出てこなくてな」
[カホラ]:「ひょっとして、ピアリーに関して?」
[セフィル]:「かもしれないんだが……うーん」
[カホラ]:「思い出して、頭を柔らかくして思い出して!」
[セフィル]:「うーん。……ピアリー。……………………、…………、……」
[カホラ]:「…………」
[吹雪]:「学園長?」
[セフィル]:「……………………! そうだ、思い出したぞ!」
学園長はそう言うと、立ち上がって棚をごそごそと探り始めた。