カホラルート・プレスト(14)
[カホラ]:「私が大勢を低くするから、その間に後ろに回り込んで」
[吹雪]:「分かりました」
[カホラ]:「…………」
先輩は身を縮めて俺が通れるくらいのスペースを作ってくれた。その間に、俺は素早く後ろに回る。体は、まだ背中合わせの状態。平静を保つために、一度深呼吸をしよう。
[吹雪]:「スーハースーハー……」
[カホラ]:「べ、別に緊張しなくてもいいのよ?」
[吹雪]:「気遣い、ありがとうございます。……じゃあ、向き直りますね」
[カホラ]:「ええ、よろしく」
俺はゆっくりと先輩の方に向き直る。
[吹雪]:「…………」
[カホラ]:「…………な、何かした?」
[吹雪]:「い、いえ、何でもないですよ?」
[カホラ]:「どうして疑問形なの?」
[吹雪]:「いや、大丈夫です」
[カホラ]:「な、ならいいけど」
目線の先には先輩のスカート……と、ちょっとだけ覗く中の下着があった。何だろう、完全に丸見えじゃないのは良かったんだが、逆にほんのちょっとだけ見えてるのも、それはそれでヤバい気がするのは俺だけか? いくら見ないように心掛けるとは言っても、どうしても目線がそっちに向いてしまう。悲しき男の性だ。だ、ダメだ、考えてはいかん。まず、どこにスカートが挟まってるのか確認しないと。
[カホラ]:「どこに引っ掛かってるか、分かった?」
[吹雪]:「い、今見てみます」
顔を少し近づけて、ポイントを探す。よし、目線が上になったから下着も見えなくなったぞ。これなら少し探しやすい。
[カホラ]:「右側だと思うんだけど」
[吹雪]:「右側……あ、見つけた」
細く尖った岩のような部分にスカートが刺さりこんでいる。これがきっと原因だろう。もう少し力を入れていたら、音を立てて裂けていたかもしれない。
[吹雪]:「先輩、見つけました」
[カホラ]:「本当? じゃあ、取ってちょうだい」
[吹雪]:「分かりました。すいません、ちょっとスカートに触りますね」
[カホラ]:「ええ」
[吹雪]:「スーハースーハー……」
[カホラ]:「ほ、本当に大丈夫? 吹雪」
[吹雪]:「大丈夫です、ご心配なく」
[カホラ]:「……若干心配ね」
呼吸と精神を安定させて、いざ! ……右手で慎重に尖りからスカートを外していく。そうすると、嫌が応にもスカートは上に捲り上がってきて……。
[吹雪]:「おお……!」
いかん、声に出てしまった。落ち着け、俺、大丈夫だ、ちょっと下着が見えただけだ。
[吹雪]:「後少し、後少し……」
そして――。
[吹雪]:「やった、先輩、取れました」
[カホラ]:「本当? ――あ、本当だ、動けるわ」
自由に動けるようになったことを確認した。
[吹雪]:「じゃ、じゃあ俺は前に戻りますので」
[カホラ]:「ええ、ありがとね? 吹雪」
[吹雪]:「いえ、こちらこそ」
[カホラ]:「……それはスカートの中を見せてくれてありがとうってことかしら?」
[吹雪]:「い、いやいやいやいやいや、そ、そんなことは全く考えてないですと言いたいです」
[カホラ]:「あ、慌てすぎよ吹雪。大丈夫、怒ってるわけじゃないから」
[吹雪]:「本当ですか?」
[カホラ]:「ええ、頼んだのは私なんだから。これでチャラってことにしてもらってもいいかしら?」
[吹雪]:「は、はい。構わないです」
[カホラ]:「さあ、前どうぞ?」
[吹雪]:「失礼します」
さっきと同じ要領で俺は再び先頭に戻る。
[吹雪]:「あ、小さい穴が開いてるかもしれないので、後で確認してください」
[カホラ]:「ええ、分かったわ」
大きなハプニングだったが、これでまた前に進めるな。しかし、あそこまで取り乱してしまうとは、別に女性の下着を見るのは初めてのことじゃないのに、やっぱり相手が先輩だからだろうか? 見えてしまったストライプの柄は、しばらく頭から離れそうにない。
……………………。
…………。
……。