カホラルート・プレスト(11)
[吹雪]:「はあ……なかなか見えてこないですね」
[カホラ]:「相当な距離を下ってきてたんでしょうね。長丁場になるかも」
[吹雪]:「スタミナ勝負ってことですか?」
[カホラ]:「そうかもね。ちょっと休憩しましょうか、この辺でスタミナを回復しておくのが適作だと思うわ」
[吹雪]:「そうしましょうか」
幸い座って休めるくらいのスペースはある。
[カホラ]:「よいしょっと」
スカートを直して先輩は腰を下ろした。
[吹雪]:「どのくらい進んで来たんですかね? 俺たち」
[カホラ]:「結構歩いた気がするんだけどね、どの辺にいるんだろうね?」
[吹雪]:「中間地点くらいまで来てたら嬉しいんですけどね」
[カホラ]:「そうね、とりあえず日が暮れるまでには戻れるといいわね」
[吹雪]:「そうですね」
[カホラ]:「――アレを食べましょう? さっきお母さんからもらったもの」
[吹雪]:「チョコビスケットですか?」
[カホラ]:「うん、糖分を摂っておくと後半も踏ん張れると思うから」
[吹雪]:「そうしましょうか、お茶がないのは残念ですけど」
[カホラ]:「ごめんね、水しか持ってきてないわ」
[吹雪]:「いやいや、全然気にしなくていいですよ。こんなことになるとは思ってませんでしたし」
[カホラ]:「……これを見越して、お母さんはビスケットをくれた、何てことはないわよね?」
[吹雪]:「それはいくらなんでも……ないと思いますよ?」
[カホラ]:「はっきり断言させないあたり、お母さんって感じがするわね」
[吹雪]:「申し訳ないです」
[カホラ]:「吹雪は悪くないわよ、悪いのはお母さんだから。……帰ったらお母さんに聞いてみましょう」
本当のところはどうなんだろうな。
[カホラ]:「食べましょう。せっかくもらったわけだし」
[吹雪]:「はい、いただきます」
袋を開けて一口かじった。
[カホラ]:「やっぱり美味しいですね」
甘さ控えめで、くどくないから食べやすい。
[カホラ]:「吹雪も、この美味しさに引き込むことができたみたいね」
[吹雪]:「引き込まれてしまったみたいですね」
[カホラ]:「これからもチョコビスケットをよろしくね?」
[吹雪]:「あれ? 前回も同じような宣伝をされたような気が」
[カホラ]:「私も思ったわ。でも、私は宣伝をしなくちゃいけないから、嫌がらないで聞いてね」
[吹雪]:「先輩の使命だったんですね。チョコビスケットの美味しさを伝えることは」
[カホラ]:「なるべく多くの人に食べてほしいって気持ちはあるわね」
[吹雪]:「だとしたら、舞羽たちに食べさせてあげたらいいと思いますよ? 多分喜んで食べると思いますし、すぐに美味しさに気付くと思います」
[カホラ]:「仲間内から攻めていくのはアリね、吹雪、良いこと言ったわ。そうしましょう」
[吹雪]:「あ、採用ですか?」
[カホラ]:「ええ、みんなに食べさせてあげましょう。そして、美味しさを他の人に伝えてもらう、素晴らしいプランね」
[吹雪]:「近い未来、ブームになってるかもしれないですね」
[カホラ]:「だと嬉しいわね」
[吹雪]:「あはは」
[カホラ]:「ふふ」
お互いに顔を合わせて笑いあう。