カホラルート・プレスト(1)
12月23日(木曜日)
練習に精を出し、昼食を済ませ――。
[カホラ]:「よし、準備完了」
[吹雪]:「じゃあ行きましょうか」
[カホラ]:「そうね」
……………………。
[場所:学園長室]
コンコン。
[カホラ]:「お母さん、準備できたわよ」
[セフィル]:「ああ、入って来てくれ」
[カホラ]:「入りましょうか」
[吹雪]:「はい。失礼します」
俺たちは学園長室に入らせてもらう。
[セフィル]:「んむ、んむ……」
中に入ると、学園長はもぐもぐとチョコビスケットをかじっていた。
[セフィル]:「やっぱり美味いな、このビスケットは」
[吹雪]:「あれって、以前先輩から食べさせてもらった」
[カホラ]:「ええ、同じものね。私たち親子は、みんなあれが大好きだから」
[セフィル]:「よし、じゃあ幸せを分けてあげよう」
学園長は俺たちに向かってそれを投げた。
[吹雪]:「おっと、ありがとうございます」
[カホラ]:「くれるのは嬉しいけど、そんなに食べて大丈夫なの? お母さん」
[セフィル]:「まだそんなには食べてないぞ」
[カホラ]:「嘘ばっかり、ごみ箱にたくさんビスケットの袋が入ってるわよ」
[セフィル]:「これは……昨日食べたものだ」
[カホラ]:「だとしてもすごい量じゃないの。太っちゃうわよ?」
[セフィル]:「それは心配ない。今日はこれを食べる代わりに、昼ご飯を食べないことにしているからな」
[カホラ]:「体に悪すぎるわよ、それ」
[セフィル]:「ビスケットは炭水化物だから大丈夫だ」
[カホラ]:「何が大丈夫なのよ、ちゃんと三食しっかり食べないと結局は太っちゃうんだから」
[セフィル]:「とは言ってもこれが美味すぎるんだよ、どうにも手が止まらないんだ」
[カホラ]:「気持ちは分かるけど、ちゃんと食べないとダメ。仮にも学園長なんだから、みんなに認められる生活リズムを確立して」
[セフィル]:「厳しいな、カホラは。――ちょっと待っててくれ、もう少しで紅茶を飲み終えるからな」
[カホラ]:「私たちが来るまでに済ませておいてよ……」
[セフィル]:「はっはっは、心配しなくてもストーンサークルは逃げては行かないさ」
[カホラ]:「そういう問題じゃないんだけど……」
[吹雪]:「まあまあ、先輩」
[カホラ]:「そういえばお母さん、ピアリーのことは何か思い出した?」
[セフィル]:「うーん、それなんだが、昨日からずーっと考えてはみたんだが、まだ何も思い出せないていないんだ。本当にどこかで聞いた覚えがあるはずなんだが……すまないな。今日も考えてみるつもりだ」
[カホラ]:「そう、分かったわ」
[セフィル]:「もう情報はまとめ終えたのか?」
[カホラ]:「ええ、昨日のうちに全部ノートに記したわ」
[セフィル]:「することが速いな。カホラは良い人材になるな」
[吹雪]:「俺も見習いたいです」
[カホラ]:「吹雪は見習う必要ないわよ、すでに仕事をちゃんとこなせているんだから」
[セフィル]:「そうだぞ? よかったら私のマネージャーにならないか? 吹雪。今、腕の立つ人材を探しているところでな」
[吹雪]:「ええ!? それはちょっと……」
[セフィル]:「嫌か? 悪いようにはしないぞ」
[吹雪]:「そ、そういう問題じゃなくてですね……」
突然そんなことを言われても、何て答えていいものか分からない。
[吹雪]:「気持ちは嬉しいんですけど、今は保留ってことで」
[セフィル]:「うーん、残念だ。まあ、気が変わったら言ってくれ。就職が決まらない時とかに来ても私はウェルカムだぞ」
[吹雪]:「あ、ありがとうございます……」
突然話が現実味を帯びたな……。
……………………。