カホラルート・リテヌート(15)
[セフィル]:「うん、で、詳しい場所だが……口で説明するのは難しいから私が直々に連れて行くことにするよ。二人とも、明日の午前練習の後は空いているか? 調べるのが早いほうがいいだろう?」
[吹雪]:「え? 本当ですか?」
[セフィル]:「私はワープの魔法を使えるからな。シュッっと二人を連れて行ってシュッと帰ってくればそこまで時間はかからない。前回手伝わなかった分、今回は役立てるようにするさ」
[吹雪]:「それは助かりますね」
[セフィル]:「じゃあ明日、準備ができたら学園長室に来てくれ」
[カホラ]:「分かったわ」
[セフィル]:「さあ、次は何が聞きたい? 知っていることは洗いざらい話すぞ」
[カホラ]:「その言い方だと、私たちお母さんを尋問してるみたいよ……」
[セフィル]:「それは初体験だな」
[カホラ]:「生きてるうちに体験する必要がないものなんだけど……」
[セフィル]:「はっはっは。で? 何が聞きたいんだ?」
[カホラ]:「そうね、四季のピアノがいつ誕生したか、お母さんは知らない? ずっと前から調べてることなんだけど」
[セフィル]:「うーん、それに関してか。……すまないカホラ、それは私もよく分からないんだ」
[カホラ]:「……お母さんでも分からないか、言われれば当然のことなんだけど」
[セフィル]:「だが、それ以外のことで分かることがあるぞ」
[カホラ]:「何?」
[セフィル]:「カホラが今持っている、ジャスパーに関してだ」
[カホラ]:「ジャスパー? そういえば、どんな力があるのか聞いてなかったわね」
[セフィル]:「言っていなかったが、ジャスパーはピアニストの4人にとってなかなか重要な力を秘めた宝玉なんだぞ」
[カホラ]:「まあ、四季のピアノの前で形を変えるあたり、ただの綺麗な宝石ってことはないと思っていたけど」
[セフィル]:「そういう雰囲気を感じただろう?」
[カホラ]:「ええ、どんな力があるの?」
[セフィル]:「カホラは、四季のピアノを弾いた時に自分の魔力を大きく消費したことを覚えているか?」
[カホラ]:「それはもちろん。吹雪が倒れるまで頑張って、私たちに自分の魔力を分け与えてくれたから、最後まで弾き終わることができたんだし」
[セフィル]:「そうだな。吹雪が頑張ってくれたおかげで、魔力の消費を抑えることができた。でも、その陰で同じくらいに頑張っていたのが、このジャスパーなんだよ」
[カホラ]:「ジャスパーが?」
[セフィル]:「私が忘れずに持って行けと言ったのは、その力を使わずにピアノを弾くことはとても困難だからだ」
[カホラ]:「私たちが無事に弾けたのは、ジャスパーのおかげってこと?」
[セフィル]:「そうだ、ハーモニクサーである吹雪とジャスパー、二つの力が合わさって初めてピアニストは自分の実力を発揮できるんだ。そのジャスパーの力だが、それは魔力の増加と魔力の抑制だ」
[カホラ]:「抑制?」
[セフィル]:「そう、抑制だ。何で抑制なの? って顔をしているな」
[カホラ]:「増加だったらうなずけるけど、抑制? 私たちの魔力を抑えちゃうって逆効果になるんじゃ」
[セフィル]:「普通はそう考えるだろうな。だが、それが逆効果ではないんだ。むしろそれが大きく関係しているんだ」
[カホラ]:「その理由は?」
[セフィル]:「四季のピアノが魔力を放っていることは、二人とも知っているか?」
[カホラ]:「それはもちろん、ヒシヒシと肌で感じていたわ」
[セフィル]:「俺も、以前探索した時に感じました」
[カホラ]:「そのピアノが放つ魔力というのはなかなか強力でな、魔力に対する耐性をもたない者はそれに飲み込まれてしまうことがあるんだ。簡単に言うと、魔力の暴走の引き金になる可能性があるんだ」
[カホラ]:「魔力の暴走……」
[吹雪]:「…………」
俺が、以前起こしかけたものと同じものだろうか?