カホラルート・リテヌート(10)
[カホラ]:「とりあえず、ストーンサークルに関してはこんなところかしら。他に何か知りたいこととかある? 吹雪」
[吹雪]:「そうですね、ストーンサークルに、何か次の手掛かりになるようなものはなかったんですか?」
[カホラ]:「次の手掛かりね、うーん……あ、そういえば一つ」
[吹雪]:「何ですか?」
[カホラ]:「模様の中に、一つだけ記号のようなものが描かれていたのよ。これが何を表しているのかがまだ分からないんだけど、その時代の古代文字の一種だとしたら、あのストーンサークルがいつ作られたのかが特定できるカギになるかもしれないわ」
[吹雪]:「記号か、ストーンサークルを作った人の記録なんですかね?」
[カホラ]:「その可能性もあるけど、他のことを表している可能性もあるわ。何しろ一文字だけだからね、長々と書かれているのだとしたら、記録の可能性が高いのだろうけど」
[吹雪]:「短いが故に、そうだと断定ができなんですね」
[カホラ]:「ええ、手掛かりになるかもしれないから、しっかり記憶はしておくつもりよ」
[吹雪]:「俺も覚えておきます。ちょっと見せてもらってもいいですか?」
[カホラ]:「ええ、これよ」
紙に書かれた模様の右下、確かに今までに見たことがない記号が一文字だけ記されている。
[カホラ]:「このような記号は初めてですね」
[吹雪]:「何かの文献に載ってないかしら?」
[カホラ]:「この後お母さんに聞いてみましょうか、それか図書館の先生に。ひょっとしたら、何か知ってるかもしれないし」
[吹雪]:「それがいいかもしれませんね。……よし、焼き付け完了」
先輩に用紙を返した。
[吹雪]:「これでもう忘れません」
[カホラ]:「よろしい、じゃあ戻りましょうか」
気付けば夕ご飯の時間になっていた。周りを見れば、俺たち以外に人もほとんどいなかった。
[吹雪]:「メチャクチャ集中してやってたんですね、俺たち。周りがいなくなることに気付かないくらい」
[カホラ]:「没頭すると何も見えなくなるっていうのはこのことなのね」
[吹雪]:「身を持って体験しました」
[カホラ]:「急いで戻ったほうがいいかもしれないわね、繭子先生が暴走する前に」
[吹雪]:「……行きましょう」
……………………。
俺たちが急いで帰ると、餓死寸前のマユ姉が俺たちを迎えてくれていた。