カホラルート・リテヌート(7)
[吹雪]:「借りてきました」
[カホラ]:「ありがとう」
[吹雪]:「何ページですか?」
[カホラ]:「確か……122ページだったはず」
[吹雪]:「お、覚えてるんですか? どこに何が書いてあるか」
[カホラ]:「その本にはずっとお世話になってるから、いつの間にか暗記しちゃってたみたい。人間の記憶力も、あまり馬鹿にできないわね」
好きな本の内容を忘れないのなら分かるが、ページ数まで覚えるのはなかなかできないと思う。
[カホラ]:「開いたら、私の脇に置いてちょうだい」
[吹雪]:「はい」
言われたとおりに役目をこなす。
[カホラ]:「うーん、この部分が……ポイントになりそうね」
[吹雪]:「やはり他のストーンサークルとは異質なんですか?」
[カホラ]:「ええ、一言でいえば、かなり特殊ね。ここまで緻密なものはあまり見たことがないわ」
こくりとうなずきながら。
[カホラ]:「そもそもストーンサークルっていうのは魔法陣と互換性があるのよ。丸い円の中に、それぞれ異なる紋模様を描いたもの。何故かと言えば、ストーンサークルを基にして、魔法陣は完成されたものだから」
[吹雪]:「そうなんですか?」
[カホラ]:「ええ。円というものは、切り離された空間として捕らえられているの。それを表すのにピッタリだったのがストーンサークルなのね。石は、守りが固くて、壊されにくいから。でも、それを常に行うのは至難の技。時代が進むと、簡易性を求めるようになってくる。それを追及して完成したのが魔法陣なの。言ってしまえば、別に石を必ず使わなければいけないということはなかったのよ。円と言う概念を根底に置くことができれば。地面に模様を描くだけでも、それなりの効力は発揮できるのよ」
[吹雪]:「仮に円じゃない魔法陣を作ったとしたら、やっぱり威力は落ちるものなんですか?」
[カホラ]:「全部が全部そうとは言い切れないけど、大半のものがそうでしょうね。円の形にすることには、もう一つ理由があるのよ。それは、中に描いた模様を逃がさないためなの」
[吹雪]:「なるほど、閉じ込めているんですね」
[カホラ]:「そう、仮に円を描かずに中の模様だけを描いて発動させると、発動させる範囲が特定できないから、それは不発に終わってしまうの。でも、円を描き範囲を特定させることができれば、魔法陣は問題なく発動する。でも、かと言って円以外で囲むと、効果が発揮されないのよ。これは正直、はっきりとは分からないけど、円の形は魔法が均等に行き渡るからじゃないかなって私は思ってる」
[吹雪]:「なるほど」
[カホラ]:「後は、最初に魔法陣を開発した人が円にしたから、みんながそれに従ったということもあるかもしれないわね」
[吹雪]:「確かに、魔法陣が円じゃない形だと、何か違和感がありますもんね」
[カホラ]:「そうよね、円の形が一番しっくりくるわ」
[吹雪]:「先輩のおかげで、また一つ賢くなりました」
[カホラ]:「是非今度、みんなに教えてあげてちょうだい」
[吹雪]:「はい、機会があれば」
……………………。