カホラルート・リテヌート(5)
[セフィル]:「じゃあ、午前の練習はこれで終了としよう。次は授業を頑張って受けるように」
[吹雪]:「はい」
[セフィル]:「お、そうだった。吹雪」
[吹雪]:「はい? 何ですか?」
[セフィル]:「今日の放課後は、カホラとアレか?」
学園長が言うアレとは、きっと昨日のアレだろう。
[吹雪]:「はい、そのつもりです」
[セフィル]:「そうか」
[フェルシア]:「何です? あれって?」
[吹雪]:「別に如何わしいことではないぞ?」
[フェルシア]:「そんなこと思ってませんでしたけど」
[セフィル]:「む、いかん。口が滑ってしまった」
[フェルシア]:「え? 如何わしいことをするつもりなんですか? 学園長」
[セフィル]:「いや、私ではない。吹雪とカホラがだよ」
[吹雪]:「それも違います!」
[フェルシア]:「放課後に二人きり……誰もいない教室……うわあ、ムードばっちり」
[吹雪]:「だから違うんですってば! 学園長も変なこと言わないでくださいよ」
[セフィル]:「いや、吹雪がどんな反応を見せるのか気になってな。すまなかった」
そう思うのなら最初からやらないでいただきたいんだが……。
[セフィル]:「すまん、フェル。二人はまだそういうことをする雰囲気ではないんだ」
[フェルシア]:「あ、そうなんですか」
[吹雪]:「…………」
説明の仕方が引っ掛かるのは俺だけだろうか?
[セフィル]:「教えても問題ないか? 吹雪」
[吹雪]:「あ、はい。フェルシア先生なら」
[セフィル]:「実はな、フェル――」
学園長は、フェルシア先生に俺たちがしていることを説明した。
[フェルシア]:「なるほど、四季のピアノの研究ね。なかなかロマンがあるじゃない?」
[吹雪]:「元々はカホラ先輩が自主的に取り組んでいたことなんですけど、話を聞いてるうちに俺も気になってきて、現在に至ってるんです」
[フェルシア]:「でも、気になる気持ちは分かるわ。あんなにすごい存在感を誇っているのに詳しいことがあまり分かっていないっていうのは疑問があるもんね」
[吹雪]:「フェルシア先生は、何か知ってることとかってありませんか?」
[フェルシア]:「うーん、すでに二人が知ってることしか知らないわね。私もほとんど四季のピアノに関することは分からなくて……ごめんなさいね」
[吹雪]:「いえ、気になさらず。それが普通ですから」
[フェルシア]:「私も、何かあったら協力するわ。言ってちょうだい」
[吹雪]:「ありがとうございます」
[セフィル]:「で、さっきの話の続きだが、今日の夜、カホラの練習が終わったら教える予定だ。その時は、吹雪も来てくれ。いいか?」
[吹雪]:「はい、必ず行きます」
今日の夜か、どんなことが分かるか、ちょっと楽しみだ。
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