カホラルート・レント(9)
[吹雪]:「へえ、こうなってるのか……」
ガラスの内側には、小さな皿が敷かれてありそこに燃料となる油が注がれている。その中心にそこまで太くない芯が立っていて、その先端で赤い炎がゆらゆらと燃えている。この芯に油が染みているんだろう。
[吹雪]:「なるほど……これなら長時間でも安心ですね」
[カホラ]:「そうね、ガラスで保護されてるし、風にもそこそこ強いし」
[吹雪]:「そうですね。ふーん、なるほど……」
[カホラ]:「何か思いついたの?」
[吹雪]:「ええ、次の部の展覧品とかに活用できないかなって思って。例えば、燃料を油じゃなくて魔法に替えるとか」
[カホラ]:「燃料を魔法に、ね。マジックランプってこと?」
[吹雪]:「まあ、そんなところですかね。あーでも、照らすことができればいいわけだから別に火に拘る必要はないのか」
[カホラ]:「要はランプみたいな機能があればいいのよね? ずっと詠唱し続けてるよりも、容器に閉じ込めたほうが疲労は少ないでしょうね」
[吹雪]:「そうですね。となると、やっぱり魔法ブースターか……」
[カホラ]:「でも、魔法ブースターは動かす時に魔法を送り込まないといけないでしょう? 吹雪がやりたいのは、すでに魔法のエネルギーが入っている状態のものを作ることでしょう?」
[吹雪]:「ああ、確かに。……だとすると、魔法ブースターに何らかの工夫を施さないといけないのか……うーん……」
[カホラ]:「吹雪も、何だかんだ言って発明家ね。サイエンティストみたいな顔をしてるわよ」
[吹雪]:「発明家なんて言えませんよ。俺のはただの趣味ですから」
[カホラ]:「趣味でも、そういう探究心はとっても大事でしょ。人間、みんな発明家みたいなものよ。次に続く新しい発見をしていくわけだからね」
[吹雪]:「おおっ……今の言葉、後世に残していきたいですね」
[カホラ]:「ふふ、大げさ。何か手伝ってほしいことがあったらいいなさい? 力になるわよ」
[吹雪]:「ありがとうございます。すっごく頼もしいです」
[カホラ]:「今日もだけど、いつも吹雪にはお世話になってるからね。いつでも頼っていいわよ? ふふ」
[吹雪]:「…………」
[カホラ]:「どうかした? 吹雪?」
[吹雪]:「あ、いえ、何でもないです」
うーん、また見入ってしまった。本当に最近の俺はおかしいな。
注意していかないと……。
[吹雪]:「ランプ、ありがとうございました」
[カホラ]:「別に持ってていいわよ? 何だか似合ってるし」
[吹雪]:「ランプに似合う似合わないってあるんですか?」
[カホラ]:「何となく雰囲気がね。そのままでいいわよ」
[吹雪]:「じゃ、じゃあ……」
[カホラ]:「……今、松の木のところを過ぎたから、もう少しで到着するわ」
[吹雪]:「了解しました」
……………………。