カホラルート・ジョコーソ(11)
[繭子]:「あ、起きてる、ふーちゃんが起きてる!」
[舞羽]:「大丈夫なの? 体は何ともないの?」
[カホラ]:「痛いところとかは? どこかおかしいところとかはない?」
[聖奈美]:「し、心配かけるんじゃないわよ! 本当に、びっくりしたんだから」
[吹雪]:「あ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
一変にまくし立てられ、どれに答えていいのか分からない。
[吹雪]:「大丈夫だから、ちょっと疲労がたまっただけだから」
[舞羽]:「よ、よかった」
みんな、俺の顔を見てほっとしているようだった。
[フェルシア]:「治癒魔法はかけておいたから、直に良くなってくるはずよ」
[吹雪]:「ごめんな、心配かけて」
[セフィル]:「本当だ、無理をするなとあれだけ言っていたのに」
[吹雪]:「が、学園長!?」
いつからそこにいたんだ?
[セフィル]:「頑張るのは良いことだ、だが、倒れるまで頑張れなど一言も言ってないぞ。それは単なる無茶だ」
[吹雪]:「う……すいません」
[セフィル]:「もしものことがあってからでは遅いんだ。もっと自分の体を大事にしなくては」
[吹雪]:「はい……以後気をつけます」
[セフィル]:「ふう……だがまあ、よく頑張ってくれた。吹雪の魔力を受け取ったおかげで、みんな最後までピアノを弾くことができたしな」
[吹雪]:「あ、本当ですか?」
[セフィル]:「あの後、全員の魔力のチェックをしたんだ。四季のピアノで、どれくらいの魔力を消費するかを知っておくために。そしたら、全員の魔力が40を下回ってたんだ」
[吹雪]:「そ、そこまでですか?」
一般的に、魔力のパーセンテージは30を下回ってしまうと極度の負担が体にかかる。それに近いということは、負担もかなりかかっていたということ。
[セフィル]:「舞羽が37、繭子が38、聖奈美が38でカホラが36。今は治癒魔法で大分回復しているが、終わった直後はみんな相当疲れていたんだ」
[吹雪]:「やっぱり、一筋縄じゃいかないってことですか」
[セフィル]:「そういうことになるな。だが、みんなが疲労しながらも最後まで弾き終えることができたのは、吹雪が中途で魔力を供給したからなんだ」
[吹雪]:「俺、ちゃんと供給できてましたか?」
[セフィル]:「ああ、成功していたぞ。なあ? みんな」
全員が顔をそろえてうなずいてくれた。
[舞羽]:「吹雪くんの力、弾いてる途中でもすごく伝わってきたよ」
[繭子]:「うんうん、ふーちゃんの後押しがあったからこそだよ~」
[聖奈美]:「まあ、心配してたけど、ちゃんとできてたみたいね。及第点ね」
[カホラ]:「吹雪ならできるって信じてたわ。ありがとね」
全員から賛辞をもらえるなんて、感無量だな。
[吹雪]:「ありがとう、みんな。次はもっと、楽にピアノを弾くことができるように頑張るよ」
[セフィル]:「次は倒れるんじゃないぞ?」
[吹雪]:「は、はい。了解です」
[セフィル]:「うむ、じゃあ、今日の練習はこれで終了としよう。今日はゆっくり休んで疲れをとること。明日も練習があるから、みんなで頑張っていこう」
[全員]:「はい!」
――全体練習は、色々あったけど、うまくいった。