カホラルート・フォルテ(6)
[カホラ]:「ダメなのよね」
[吹雪]:「そうだったんですか?」
[カホラ]:「あのカサカサ、とかヌルヌルした感じがどうしてもなれないのよ。特にバッタとかコオロギの類は特に」
[吹雪]:「確かに、あっちに悪気はないんでしょうけどこっちに向かってくる時がありますもんね」
[カホラ]:「そう、はあ……吹雪がいてくれてよかったー」
[吹雪]:「立てますか?」
[カホラ]:「ちょっと待って。――あ」
[吹雪]:「どうしました?」
[カホラ]:「腰抜けちゃって、立てないわ」
[吹雪]:「……ふっ」
[カホラ]:「あ、吹雪。今笑ったでしょう!?」
[吹雪]:「す、すいません。でも、ちょっと……ははは」
[カホラ]:「もう、こっちは本当に死ぬかと思ったのよ」
[吹雪]:「もう笑いません、大丈夫です」
[カホラ]:「もう……」
先輩は目を反らして顔を赤くしていた。やっぱり先輩も、一人の女の子なんだな。昆虫が苦手だったのはちょっと意外だったけれど。
[カホラ]:「しばらく、待っててね」
[吹雪]:「はい、了解です」
[カホラ]:「何か手がかりは見つかった?」
[吹雪]:「隅々探索したつもりなんですけど、特にはなにも」
[カホラ]:「そっか、そう簡単には見つからないか」
[吹雪]:「ピアノを保護するためのものですし、何か手がかりがあってもおかしくないと思うんですけどね」
[カホラ]:「できた時期が違うから難しかったのかもしれないわね。それにさっきも言ったけど、大きく目印を残したら簡単に場所が分かってしまって危険だし」
[吹雪]:「やっぱりそうですよね」
[カホラ]:「でも、保護魔法が強力な力を持ってることは分かったわね」
[吹雪]:「確かに」
[カホラ]:「ここ近辺に生えている木々や花が、冬なのにまだ綺麗に咲いている。魔法が有害からそれを守ってる証拠よね」
[吹雪]:「この保護魔法の中には、除菌みたいな作用も含まれてるんですかね?」
[カホラ]:「どうなのかしら? 確かに三重に重ねがけされているわけだし、そういった作用を組み込むことは可能だとは思うけど」
[吹雪]:「ピアノを高潔に保つためにそれを使うのは別に不思議ではないですよね」
[カホラ]:「そうね、それも考えて調べる必要がありそうね。――よいっしょ!」
先輩は力を入れて立ち上がった。
[カホラ]:「はあ、立てた」
[吹雪]:「大丈夫ですか?」
[カホラ]:「ええ。長い間恥ずかしい姿を見せるわけにはいかないしね」
[吹雪]:「別に恥ずかしいことでも」
[カホラ]:「立てなくなった私を笑ったのは誰よー?」
[吹雪]:「た、確かに笑っちゃいましたけど、別にたいしたことじゃあ」
[カホラ]:「私にとってはたいしたことなの。もう大丈夫、完全復活よ」
[吹雪]:「そうですか? じゃあ、どうします? もう少しここ一体を調べますか?」
[カホラ]:「南西のほうに行きましょう。神殿にはまた近いうちに調べるし、南西に何か手がかりがあるかもしれないし」
[吹雪]:「分かりました」
[カホラ]:「じゃあ、行きましょうか」
[吹雪]:「はい」
[カホラ]:「…………」
[吹雪]:「…………」
[カホラ]:「…………」
[吹雪]:「……先輩、行かないんですか?」
[カホラ]:「吹雪が先に行ってちょうだい。……ちょっと、ね」
[吹雪]:「あ、分かりました」
俺は前方を確認しながら歩みを進めた。
……………………。