カホラルート・フォルテ(1)
12月19日(日曜日)
[場所:社会科室]
「ん、朝か……」
目覚ましの音で夢から覚めた。思い出せないから大した夢ではないだろう。
みんなはまだ……寝てるか。まあ、後ちょっとで起き出すだろう。日曜とは言っても練習はあるからな。とりあえず、朝の身だしなみを――。
俺は水飲み場へ向かう。
……………………。
[場所:水飲み場]
[吹雪]:「ん?」
水飲み場に先客がいた。顔を洗っているのは、先輩か?
[吹雪]:「おはようございます、先輩」
[カホラ]:「あ、吹雪。おはよう」
[吹雪]:「早いですね、起きるの」
[カホラ]:「吹雪も一緒じゃない。今起きたんだから」
[吹雪]:「目覚ましが早くなったんで」
[カホラ]:「早くセットしてたの? 目覚まし」
[吹雪]:「昨日からイジってはいませんね」
[カホラ]:「じゃあ昨日と起きた時間は一緒じゃないの」
優しく頭を小突かれた。
[吹雪]:「昨日よりも気持ち、早く起きた感じがするんですよね」
[カホラ]:「良いことじゃない。早起きは三文の得って言うでしょう? まあ、100年早起き続けても109円しか儲からないんだけど」
[吹雪]:「ええっ!? そうなんですか?」
[カホラ]:「そうよ、知らなかった?」
[吹雪]:「全く、ことわざは知ってましたけど」
[カホラ]:「曖昧にしか覚えてないんだけど、一文は一円の千分の一くらいしか価値がないらしいのよ。ほんとに極微少なものなの」
[吹雪]:「マジですか?」
[カホラ]:「マジ。だから、どんなに努力して早起きを繰り返しても100円くらいしか儲けが出ないの」
[吹雪]:「それだったら、早起きなんてしたくなくなりますね」
[カホラ]:「そうよね。もう少し特典をつけてほしいものよね」
[吹雪]:「でも、おもしろい話ですね。今度友人に自慢します」
[カホラ]:「是非使ってください」
[吹雪]:「先輩は色々なことを知ってるんですね。本当にすごいですよ」
[カホラ]:「私はただ知ろうとしてるだけよ。そして覚えたことだけをしゃべってるだけ、本当の私は何にも知らないわ」
[吹雪]:「でも、その知ろうっていう積み重ねで今の先輩がいるわけですから」
[カホラ]:「ふふ、吹雪は誉め上手ね」
[吹雪]:「嘘ついてませんよ、信じてください」
[カホラ]:「ありがとう。――あ、そうだ。今日、練習終わった後って時間あるかしら?」
[吹雪]:「基本的に、練習時間以外はフリーですよ。あ、ひょっとして分かったんですか?」
[カホラ]:「そうね。昨日一晩かけて、大体は解読することができたから。だから今日は、その情報を元に外に出てみようかと思うの」
[吹雪]:「つまり島探索ってことですか?」
[カホラ]:「そうね。付き合ってくれる?」
[吹雪]:「もちろんです」
[カホラ]:「下の内容は行く途中で話すわね。とりあえず、練習を頑張りましょう」
[吹雪]:「はい」
今から午後が楽しみだ。