カホラルート・アンダンティーノ(17)
そして、休憩を挟んで再開し、しばらくしてようやく――。
[吹雪]:「先輩、ありました!」
[カホラ]:「本当!? どれどれ?」
[吹雪]:「これです、合ってますよね?」
研究資料の表紙には、ピアリーの名前と下の文字がはっきりと記されている。
[カホラ]:「そうそう、これよ。でかしたわ、吹雪」
[吹雪]:「見つかって何よりです」
[カホラ]:「ドコから出てきたの?」
[吹雪]:「ここです。先輩が上を見つけた時と同じような感じでした」
何部も挟んである本棚の奥、細い一冊と一冊の間に押し込まれていた。
[吹雪]:「見つかりずらいわけですよ」
[カホラ]:「ピアリーって、恥ずかしがり屋だったのかしら?」
[吹雪]:「あんまり関係ないと思いますよ?」
[カホラ]:「でも、捨てられてなくてよかったわ。一時はあきらめかけてたけど、信じる者は救われるようにできてるのね」
[吹雪]:「先輩の頑張りを見てたのかもしれませんね」
[カホラ]:「それは嬉しい限りね。早速、ちょっと中を見てみましょう」
[吹雪]:「はい」
資料はかなり変色していたが、読む分には支障はきたさない。先輩は資料に手をかけた。パラパラとめくり、どんなことが書かれているかを確かめているようだ。
[カホラ]:「――あったわ。ストーンサークルに関する研究資料」
先輩はそこに付箋を貼り付けた。
[カホラ]:「それからこっちは……。…………」
先輩はそれきり真剣に資料に目を通していた。
俺はそれをじっと見つめている。先輩は問題なく読んでいるが、俺にはどう書かれているかが読めないからな。違う国の言葉だし……。
[カホラ]:「………………………………なるほどね」
[吹雪]:「もう全部読み終わったんですか?」
[カホラ]:「まさか、触りだけよ。今日一日かけて読み進めるわ。吹雪には明日、内容を教えてあげる」
[吹雪]:「ありがとうございます」
[カホラ]:「お礼を言うのは私のほうよ。付き合ってくれて感謝してるわ」
[吹雪]:「いえいえ。有力な手がかりを掴めるといいですね」
[カホラ]:「これが見つかっただけでもかなり有力よ。きっと何かは掴めるでしょう」
[吹雪]:「ですね」
[カホラ]:「ふふ、読むのが楽しみだわ」
その宣言通り――。
[場所:社会科室]
[カホラ]:「…………」
[繭子]:「ねえねえふーちゃん」
[吹雪]:「何だ?」
[繭子]:「さっきからカホラちゃん、何してるの? 近づいちゃいけないオーラがにじみ出てるんだけど」
[吹雪]:「見たら分かるだろう? 読書してるんだよ、邪魔しちゃいかんぞ? 真剣に仕事してるんだ」
[繭子]:「すごいなー、まるで教師みたいだよ~」
[吹雪]:「マユ姉も教師だろうが……」
本当に、明日には何かが分かりそうだ。