カホラルート・アンダンティーノ(11)
[カホラ]:「とにかく、ピアリーはこの島にたどり着き、四季のピアノについて研究をしていった。これは変わらない事実ね」
[吹雪]:「その資料をこれから探すんですか?」
[カホラ]:「そうね。基本的に四季のピアノは謎が多いから、それについて調べた学者の研究資料はとっておくのがこの島では普通なの。さっき調べたピアリーの資料に、上って字が入ってたから、きっと下もあるはずなの」
[吹雪]:「それを探せばいいんですね」
[カホラ]:「ええ、でもこの図書室にはない可能性が高いから、古書室のほうに行ってみましょう」
[吹雪]:「古書室? そんなところがあるんですか?」
[カホラ]:「あるわよ。知らなかった?」
[吹雪]:「初めて聞きました」
[カホラ]:「まあ、図書館員くらいしか利用しないからね。あそこよ、あの鍵がかかった部屋」
先輩が指さした先に、そのドアがある。
[吹雪]:「あ、あそこがそうなんですか?」
[カホラ]:「ええ、そうよ。普段使用されない本、あるいはほとんど生徒に借りられなかった本などは、この古書室に保管されるの。多分ピアリーの研究資料も、この中にあるはず」
[吹雪]:「でも、図書館員しか利用できないんですよね? 鍵が必要なんじゃ――」
[カホラ]:「ふふ、心配ご無用よ」
先輩の指には鍵束が光っていた。
[カホラ]:「ちゃーんと、借りてきてあるわ」
[吹雪]:「要らん心配でしたね」
[カホラ]:「さっき、お母さんから調べたいことがあるからってお願いしたの」
[吹雪]:「学園長は、先輩が調べてることについて知ってるんですか?」
[カホラ]:「まだ言ってはないけど、知ってるかもしれないわね。毎日のように図書館に通ってるし、母親だしね」
[吹雪]:「鋭いですからね、学園長は」
[カホラ]:「主にどうでもいいこと、だけどね」
[吹雪]:「そこは、ノーコメントってことで」
ガチャリ。
[カホラ]:「さ、中に入りましょう」
[吹雪]:「はい」