カホラルート・アンダンティーノ(10)
[カホラ]:「まだ確信ではないんだけど、ピアノはどうやらとっても昔に、誰かが生み出したものらしいのよね」
[吹雪]:「え!? そうなんですか?」
[カホラ]:「まだ本当かは定かじゃないわ。でも、さっき調べた資料の中に、それらしいことが記されていたのよ。あ、ほのめかされてるって言ったほうがいいかもしれないわね」
[吹雪]:「誰の資料に書いてあったんですか?」
[カホラ]:「ピアリーっていう学者。あまり世に広まってはいない人ね」
[吹雪]:「はあ、初めて聞きます」
[カホラ]:「普通はそうよね。特に目立った功績も残していないんだし。でもこの人は、この島に興味をもって調べていた、それは私にとっては大きな発見ね」
[吹雪]:「そうですね。もう故人ですか? その学者さんは?」
[カホラ]:「そうね、40年くらい前に」
[吹雪]:「その資料がこの学園にあったってことは、ピアリーはこの学園の卒業者なんでしょうか?」
[カホラ]:「私もそうなのかなと思って、歴代の卒業者の名前を調べたんだけど、ピアリーという名の卒業者はいなかったわね」
[吹雪]:「だとすると、個人的にこの島に興味を持ってここにやってきたってことに」
[カホラ]:「その考えが濃厚だと思う」
[吹雪]:「なるほど」
[カホラ]:「前にも話したけど、この島の人以外の人たちは四季のピアノのことを知らない人が多いから、それを調べようと思う人なんてほとんどいないのよね。そのほんの一握りの内の一人がピアリーってことね」
[吹雪]:「そうですね。四季のピアノが世に広まったら、何か悪事をしようとする人も出てくるかもしれないですからね」
[カホラ]:「そのための結界よ。中からは見えるけど外からは見えないようにするためのね。それがこの島があまり世に広まってない原因なんでしょうけど」
[吹雪]:「魔力がない人には見えないですからね。ん? だとするとピアリーはかなり魔法に長けた人ってことですか?」
[カホラ]:「可能性は高いわね。この島に来る方法は島の長に連絡をして結界を解除するか、自らの力で解除するくらいしか方法はない。どちらにしても、結界が見えないことには始まらない話だから」
[吹雪]:「仮に後者だったとして、一人の力で島全体を覆う結界って破ることは可能なんですか?」
[カホラ]:「全部を破ったとしたら、それはもう賢者と言っていいかもしれないわね。島民全員で立ち向かっても勝てるか分からないわ」
[吹雪]:「滅ぼされちゃう可能性だってありますね」
[カホラ]:「でも、一部分だったらできなくはないわね。元々結界は魔力の集合体。一部分だけを狙えば、その部分を集合体から解除させることもできるから」
[吹雪]:「でも、かなり魔力は消費しますよね」
[カホラ]:「そうでしょうね、それに、結界には自然治癒の補正もかかっているから、ちょっとの威力じゃすぐに戻ってしまうだろうし」
[吹雪]:「どっちにしても容易ではないと」
[カホラ]:「そうね、でも、恐らくピアリーにはこの島民の中に友人がいたんだと思うわよ。不法侵入だとしたら、何かしらの文献に載ってるはずだもの」
[吹雪]:「島を脅かす邪悪な学者、みたいな感じですか?」
[カホラ]:「雰囲気はそうかもしれないわね。きっとしてないだろうけど」
[吹雪]:「勝手に悪人に仕立てあげちゃダメですね」
ごめんなさい、ピアリーさん。