カホラルート・アンダンティーノ(5)
[場所:スーパー]
[カホラ]:「さて、どのお肉にしようかしら?」
話は夕食のことに切り替える。
[吹雪]:「先輩、夕食は何を作ってくれるんですか?」
[カホラ]:「そうね、一応候補としてはシチューに餃子、トンカツとか考えてたんだけど」
[吹雪]:「臨機応変に変えられるんですね」
[カホラ]:「これでも料理は苦手じゃないからね」
左手でポンポンと右腕を叩いた。
[カホラ]:「とりあえず、お肉を見てみましょうか」
[吹雪]:「そうですね」
……………………。
[カホラ]:「――さて、安いお肉は、と言っても、ここのお肉は基本的に安いのよね」
[吹雪]:「まあ、そうですね」
島価格などどこ吹く風、この店は基本的に割安なお肉を数多く仕入れている。
[カホラ]:「島民に優しいお店で助かるわね」
[吹雪]:「ですね」
[カホラ]:「予算はいくら? あんまりたくさん買っちゃうと今後に響いちゃうわよね」
[吹雪]:「そうですね、一応2000円程預かってきてるんでその予算内で収まれば問題ないと思います」
[カホラ]:「2000円ね、分かったわ。んーと、一番安くてボリュームがあるのは」
先輩は指を頬に当ててじっくり考えている。
[カホラ]:「ねえ、吹雪」
[吹雪]:「はい、何ですか?」
[カホラ]:「水炊きと鳥のカツレツ、どっちが食べたい?」
[吹雪]:「え? 俺が選ぶんですか?」
[カホラ]:「ええ、ボリュームからみて鶏肉が一番お得っぽいから。で、鶏肉の私の得意料理を作るから、吹雪に選んでもらったほうを作ろうと思ったのよ」
[吹雪]:「それ、完全に俺の意見で周りの意見が反映されないんじゃないですか?」
[カホラ]:「誰も文句は言わないわよ。少なくとも吹雪は満足してくれるでしょう?」
[吹雪]:「そうですけど、いいんですか?」
[カホラ]:「当たり前よ、私が言い出したんだから」
[吹雪]:「じゃあ……水炊きがいいです。今まで食べたことないんで」
[カホラ]:「うん、分かったわ。じゃあ今晩は水炊きにしましょう」
先輩は脂の少ない大きな鶏肉をカゴに入れた。
[カホラ]:「吹雪あそこの棚にあるポン酢をとってきてちょうだい。後、昆布も近くにあるはずだから、一つもってきて」
[吹雪]:「分かりました」
俺は言われた品を棚から手に入れた。
……………………。
[カホラ]:「ふう、ちゃんと予算内に収まったわね」
[吹雪]:「そうですね、500円も余裕がありますから」
[カホラ]:「ふふ、いい買い物ができてよかったわ」
[吹雪]:「早く、先輩の料理が食いたいです」
[カホラ]:「ふふ、腕によりをかけて作るから」
自然と、足並みは軽くなっていた。
――先輩の料理は、すごく美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまった。