カホラルート・アンダンティーノ(4)
[場所:道路]
[カホラ]:「うう、ちょっと外は寒いわね」
[吹雪]:「さすが冬ですね」
しゃべるだけで白い息が立ち上る。
[カホラ]:「でも、嫌いじゃないわね、こういうのも」
[吹雪]:「そうですか?」
[カホラ]:「ええ、確かに寒いけど、ちゃんと季節がめぐってるって肌で感じれるでしょう?」
[吹雪]:「あ、なるほど」
そういう考え方もあるな。
[カホラ]:「去年の先輩方がきちんと役目を果たせたって証拠でしょう」
[吹雪]:「そうですね、感謝しないとですね」
[カホラ]:「次は、私たちが頑張らなきゃいけない番ね。ちゃんと役目を果たして、この島を住みよい環境にしないと」
[吹雪]:「はい、頑張りましょう!」
[カホラ]:「ええ。……にしても、どうしてなのかしらね?」
[吹雪]:「四季のピアノ、ですか?」
[カホラ]:「ええ、他の島々は何もしなくても普通に季節が巡るのに、どうしてこの島だけはピアノが必要なのかしら」
[吹雪]:「やっぱり、この島だけが特別なんですか?」
[カホラ]:「そうね、資料で調べたけどピアノを弾くことで四季がめぐるというのは全くないわ。あるのは一つの季節しか巡らないとかそういう関係のものだけ、そもそも私たちの島に関しての情報はあんまりないらしいのよね」
[吹雪]:「え? そうなんですか?」
[カホラ]:「ええ、この島の特産とかそういうのは知られているけど、四季のピアノに関しては謎が多いみたいで、情報らしい情報はさしてないのよ」
[吹雪]:「確かに、島民でも謎ですもんね。だから先輩も解明しようと頑張ってるわけですし」
[カホラ]:「まあね、この謎が解ければ、なかなかの大発見に成り得るでしょうし。……本当にできるか不安なんだけど」
[吹雪]:「やっぱり、情報が少なすぎるんですか?」
[カホラ]:「それもあるし、やっぱり手がかりがほとんどないってことが大きいかしら。昔からあるといっても謎が多い四季のピアノだから、それに、謎のままでいいという学者もいて解明しようとする人材が昔から少ないのよ。それに、探求した学者の多くの意見は曖昧なものが多くて、踏まえていいものか微妙なのよね」
[吹雪]:「なるほど……」
[カホラ]:「私、もう少しで卒業だから、できれば学園に在籍している間に何とかしたいんだよね」
[吹雪]:「ああ、卒業したら、図書館を利用しずらいですもんね」
[カホラ]:「それに、あまり時間もないでしょうし、自由にできるのは今だけなのよ」
[吹雪]:「立派ですね、先輩は」
[カホラ]:「立派じゃないわよ。ただ個人的に興味があるだけ」
[吹雪]:「俺でよければ手伝いますんで、いつでも言ってくださいね」
[カホラ]:「ありがと、吹雪」
[吹雪]:「これくらいしか、俺にできることはありませんから」
[カホラ]:「十分だわ。……そういう意味でもピアニストに選ばれたっていうのは、結構嬉しいわよね。直に触れれば、分かることもたくさんあるはずだしね。既にいくつか気付いたことがあるし」
[吹雪]:「例えば?」
[カホラ]:「たいしたことじゃないけど、一つは市販のピアノと比べて弾きやすいってことね。他のものと比べると、音色も良いし、どうしてか分からないけど指の動きも滑らかになってる気がするの、気のせいかもしれないけどね」
聞く限り、きっと本当だと思うけどな。
[カホラ]:「もう一つ、関係ないことかもしれないけど、四季のピアノの周りでは、たくさんの魔力が渦巻いているのを感じたわね」
[吹雪]:「あ、それも俺は少し分かります」
[カホラ]:「本当?」
[吹雪]:「はい、みんなで四季のピアノの選出に行った時にそれを感じました」
魔法を扱えるものには感じることのできる魔力の波。おぼろげではあるけど、四季のピアノが置いてある場所には多くの魔力が閉じこめられてる感じがした。
[カホラ]:「そっか、吹雪も感じてたのね」
[吹雪]:「普段はあまり感じないんですけど、あの場所ではすぐに感じましたね」
[カホラ]:「ふふ、仲間がいたのね」
[吹雪]:「やっぱり、四季のピアノと魔法は密接に関係してるんですかね?」
[カホラ]:「おそらくそうでしょうね。私たちは四季のピアノに選ばれたわけですもの、ひょっとしたら、ピアノの中に何かの存在意識が宿っているのかもしれないし」
[吹雪]:「おお、そう言われるとそんな感じもしますね」
[カホラ]:「あくまで仮定よ? 誰もその事実までたどり着いたものもいないから。私の勝手な見解だから」
[吹雪]:「でも、俺の中では一番しっくりくる考え方です」
[カホラ]:「本当はどうなのか、気になるわね」
[吹雪]:「はい、俺も知りたくなってきました」
[カホラ]:「ふふ、分かったらまた何か教えてあげるわ」
[吹雪]:「はい、是非お願いします」
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