カホラルート・アンダンティーノ(3)
[場所:廊下]
[吹雪]:「んー、どこにいるんだ? 先輩は」
さっきから探しているんだが姿が見当たらない。何で探してるかっていうと、今日は先輩が料理担当&ちょっと精肉類がなくなってきたから少し買い足そうということになったからだ。
だから、今日夕食を担当する先輩の欲しいものを買ってこようと思うんだけど……。
[吹雪]:「教室には、いないか」
[吹雪]:「だとしたら、だ」
先輩が好んで行きそうなところと言えば――
[吹雪]:「あそこだな」
……………………。
[場所:図書室]
[吹雪]:「思ったとおりだ」
先輩は席に座って本を広げ、せっせとペンを走らせていた。ひょっとして、以前も調べてたものかな?
[吹雪]:「カホラ先輩」
とりあえず、俺は声をかけた。
[カホラ]:「あら、吹雪、どうしたの?」
顔を上げて微笑みながら。
[吹雪]:「ちょっとだけ聞きたいことがあってきたんですけど、いいですか? 今」
[カホラ]:「ええ、全然。趣味で調べてるものだから」
[吹雪]:「それって、以前も調べてたものですか?」
[カホラ]:「そうよ、よく分かったわね」
[吹雪]:「先輩、いつも一生懸命やってるから俺も覚えちゃいました」
[カホラ]:「うふふ、理解者がいるって結構嬉しいわね」
[吹雪]:「俺はいつだって先輩の理解者ですよ」
[カホラ]:「ふふ、ありがと。で、聞きたいことって何かしら?」
[吹雪]:「ああ、今から買い出しに行くんですけど、冷凍庫に精肉がなくなってたんです。なんで、今日料理を作ってくれる先輩にどれがいいか聞こうかと思って。何かありますか?」
[カホラ]:「あ、そうなの。うーん、そうねー買ってきたお肉に合わせていくらでも調理は可能だけど」
[吹雪]:「あ、そうなんですか」
[カホラ]:「これでも料理はそれなりにできるのよ。まあ、舞羽ほどじゃないけどね」
[吹雪]:「先輩の夕食、楽しみです」
[カホラ]:「ふふ、期待しててね。うーん、じゃあこうしましょう」
[吹雪]:「はい?」
[カホラ]:「私も一緒に買い物に行くわ。そのほうが決めやすくていいでしょう」
[吹雪]:「確かにそうですけど、悪くないですか? 先輩、この後も練習あるのに、疲れさせちゃうんじゃ」
[カホラ]:「買い物に行くぐらいで疲れることなんてないわ。吹雪には私がそんなにか弱く見えるの?」
[吹雪]:「そ、そういう意味で言ったわけじゃないんですけど、疲労させるのはどうも忍びないんで」
[カホラ]:「それを言ったら吹雪だってそうじゃない。毎日魔力を消費してるわけでしょう? むしろ吹雪こそ行かないようにするべきじゃない」
[吹雪]:「いや、でも俺は、男なんで」
[カホラ]:「体力があるから大丈夫、と」
[吹雪]:「は、はい」
[カホラ]:「ま、とにかく私も行くわ。最近ずっと学校にいたし、気分転換にもちょうどいいわ」
[吹雪]:「先輩がいいのなら、そうします」
[カホラ]:「うふふ、ちょっとしたデートね」
[吹雪]:「で、デート!?」
[カホラ]:「何そんなに驚いてるのよ、吹雪の中のブームなの?」
[吹雪]:「いや、だって……」
[カホラ]:「意味は間違ってないでしょう? デートって理由はどうあれ男性と女性が会うことを意味するんだから」
[吹雪]:「た、確かにそうですけど……」
[カホラ]:「うふふ、ちょっと楽しみね」
[吹雪]:「せ、先輩……」
[カホラ]:「さ、行きましょう。時間なくなっちゃうわ」
[吹雪]:「は、はい」
……………………。