カホラルート・コモド(2)
[場所:家庭科室]
[聖奈美]:「大久保、これ運んでちょうだい」
[吹雪]:「おお」
[繭子]:「ワタシも手伝う~」
[聖奈美]:「じゃあこれをみんなのところに」
[繭子]:「はーい」
[聖奈美]:「まだあるから、またこっちに戻ってきてちょうだい」
[吹雪]:「おお」
[聖奈美]:「はい、お待たせしました」
[繭子]:「わーい、美味しそう~」
横できゃっきゃとマユ姉が騒ぐ。
[繭子]:「聖奈美ちゃんは何でもできるんだね~」
[聖奈美]:「あたしは何にもできないですよ。ただ、それ相応の努力をしてるだけです」
[フェルシア]:「哲学的言葉ね、今のは」
[聖奈美]:「そういう意味で言ったわけじゃ」
[繭子]:「じゃあ、聖奈美ちゃんは努力の天才ってこと?」
[聖奈美]:「努力の天才?」
[繭子]:「努力をしたからここまで成長できたんでしょう? 人一倍の努力をすることができるわけだから、努力の天才、違うかな?」
[フェルシア]:「でもマユ、天才って何もしなくても才能に満ち溢れてるのよ? 努力したら天才じゃないんじゃないかしら?」
[繭子]:「へ? でも、努力をしなくちゃ上手にはなれないんだよ?」
[フェルシア]:「それを必要としなくても上手なのが天才ってものでしょう? 努力をしちゃったらそれはもう天才とは言えないんじゃない?」
[繭子]:「うーん、哲学だね~?」
[聖奈美]:「そ、そうですね」
[吹雪]:「おい、杠が困ってるぞ? マユ姉」
[繭子]:「あ、ごめんね? 聖奈美ちゃーん」
[聖奈美]:「いえ、気にしてませんから。大丈夫です」
[舞羽]:「んー…………」
[吹雪]:「どうしたんだ? 舞羽」
[舞羽]:「うん、カホラ先輩がいないなーって思って」
[フェルシア]:「そういえば、確かにいないわね」
[繭子]:「まだ社会科教室にいるんじゃないの~?」
[舞羽]:「さっきまで私たちはそこにいましたけど、いなかったと思いますよ」
[フェルシア]:「とすると、放課後に社会科教室に戻った可能性も少ないわね」
[繭子]:「んー、どうかしたのかな~?」
[吹雪]:「……よし」
[舞羽]:「吹雪くん?」
[吹雪]:「俺、ちょっと探してくるわ。何となくだけど、先輩がいる場所が分かる気がするし」
[舞羽]:「あ、じゃあ私も」
[吹雪]:「いや、大丈夫だよ俺一人で。これから練習あるんだから、体力を使ってはいかん」
[舞羽]:「探すのにそんなに体力いるのかな……」
[吹雪]:「いいから、素直に俺の言うことを聞いておきたまえ」
[舞羽]:「は、はい」
[聖奈美]:「何? その上からな態度は?」
[吹雪]:「俺と舞羽はいつもこんな感じだから、気にしたら負けだぞ」
[聖奈美]:「べ、別に気にしてるわけじゃないわよ。というか、行くのなら早く行ってきなさいよ」
[吹雪]:「早く戻るようにする。遅くなったら先に食べててもいいから、じゃあ行ってきます」
[舞羽]:「絶対に帰ってきてね? ワタシ、信じてる」
まるで特攻隊に送り出された気分で俺は家庭科室を出た。