マルカート(14)
[繭子]:「んー、おいしー! 舞ちゃん、おかわり~」
[舞羽]:「あ、はーい」
マユ姉のお椀を受け取って、鍋からご飯をよそう。
[フェルシア]:「相変わらず、すごい食欲ね」
[舞羽]:「だっておいしいんだも~ん。舞ちゃんの料理は絶品だからね」
[カホラ]:「ホント、絶妙な味付けね。こんな料理をいつも食べてたのね、吹雪は」
[吹雪]:「なるべく自分で作るように努力はしてるんですけど、どうやったって舞羽の料理には勝てませんよ」
[カホラ]:「これは、ちょっとプレッシャーね、聖奈美」
[聖奈美]:「そうですね。はいダルク、お肉、多めに入れておいたから」
[ダルク]:「うん、ありがとう」
[カホラ]:「最初に舞羽に作らせたのは失敗だったかしら?」
[舞羽]:「えっ? そ、そんなこと」
[カホラ]:「そりゃあ自分ではそう思うでしょうね。それに舞羽だし」
[舞羽]:「???」
[聖奈美]:「頑張るしかないわね」
[繭子]:「期待してるよー、カホラちゃん、聖奈美ちゃん」
[カホラ]:「はい、ありがとうございます」
[吹雪]:「…………」
[舞羽]:「吹雪くん、おかわりは?」
[吹雪]:「ん? あるのか?」
[舞羽]:「うん、残すのはもったいないし」
[吹雪]:「ん、そうだな。じゃあ……スープって余ってるか?」
[舞羽]:「うん」
舞羽は少し嬉しそうに皿にスープをよそってくれる。
[カホラ]:「今日は、どんな練習をしたの?」
[吹雪]:「今日から、本格的にホーリーカルムの練習に入りました。ここからが正念場になりそうです」
[カホラ]:「そうなの」(カホラ)
[吹雪]:「先輩たちは? そろそろ全員で合わせてみたりするんですか?」
[カホラ]:「そうね、個人個人でどこまで完成してるのかにもよるんだけど、そろそろ合わせていくかもしれないわ」
[吹雪]:「先輩は、もう完成してるんですか?」
[カホラ]:「完成、とは言い切れないけど、大分形にはなってきたと思うわ」
[吹雪]:「なるほど、杠は?」
[聖奈美]:「そうね、あたしも同じ感じよ。形にはなってきてると思うわ」
[吹雪]:「マユ姉は?」
[繭子]:「ワタシは、ちょっと完成はしてないかな。まだ拙いところがあるから、夜はそこを重点的に練習してみようと思ってるよ」
[吹雪]:「舞羽は?」
[舞羽]:「私は、そうだね、通して弾くことはできるようになったかも」
[吹雪]:「なるほど」
みんな、それぞれ頑張ってるんだな。
[吹雪]:「応援してます」
[聖奈美]:「あなたも頑張りなさいよ? 大久保」
[吹雪]:「ああ、全力は尽くすよ」
[聖奈美]:「あなた、夜の練習はないの?」
[吹雪]:「今日は、ないな。ちょっと、魔力を消費しすぎたみたいで……これ以上すると、な」
[聖奈美]:「まあ、魔力の消費は激しいでしょうしね」
[吹雪]:「みんな練習があるんだろう? 後片づけは俺がやっておくから」
[舞羽]:「え? でも悪いよ~」
[吹雪]:「何言ってやがる。俺は練習がなくて、みんなは練習がある。これからもう一頑張りしなきゃいけない者たちに洗い物なんてさせたらモチベーション上がんないだろ? 今日は任せろって」
[舞羽]:「んー、いいのかな?」
[吹雪]:「いいに決まってる。やらせないとゲンコツすんぞ?」
[舞羽]:「ええっ!? ゲンコツ!?」
[カホラ]:「……何だかあまり見たことがない言い合いね。洗い物させないならゲンコツするって……聖奈美は見たことある?」
[聖奈美]:「もちろんありません。ま、大久保は変わってますからしょうがないんじゃないでしょうか?」
[吹雪]:「俺って、やっぱり変わってるか?」
[聖奈美]:「変わってるわよ、それもかなりね」
[吹雪]:「んー……」
[カホラ]:「悪い方向で変わってるわけじゃないから心配ないわよ、吹雪」
[吹雪]:「はあ……」
[カホラ]:「舞羽、今日は吹雪に任せましょう。せっかくやってくれるって言ってるんだから」
[舞羽]:「うん、ありがとう吹雪くん」
[吹雪]:「いいんだよ、頑張ってきな」
[舞羽]:「うん」
[繭子]:「――ごっくん。舞ちゃーん、おかわり~」
[舞羽]:「あ、はい。大盛りですか?」
[繭子]:「うん、よろしく~」
[カホラ]:「静かだと思ったら、ひたすらに食べ続けてたのね……」
[吹雪]:「マユ姉ですから……」
[繭子]:「みんなももっと食べようよ~。もう一頑張りするためにもね」
ひょっとしたら、少し聞いていたのかもしれない。