マルカート(9)
[セフィル]:「ちなみに、私たち二人は嫌いか?」
[吹雪]:「え、ええっ!?」
[フェルシア]:「が、学園長ちょっと質問がストレートすぎですよ」
[セフィル]:「しょうがないじゃないか、気になるんだもん」
もんって、また学園長らしからぬ台詞が……。
[セフィル]:「大事なことじゃないか。もし吹雪が私たちを嫌いだったら、練習にはならないんだぞ」
[フェルシア]:「それはそうですけど、もうちょっとこう包んだ言い方というか……」
[セフィル]:「単刀直入に聞いた方が手っとり早いだろう。どうだ? 吹雪。君から見て私たちという存在は」
[吹雪]:「……そんなの、決まってるじゃないですか」
[セフィル]:「…………」
[フェルシア]:「…………」
[吹雪]:「俺はお二人のこと、好きですよ」
[セフィル]:「吹雪……」
[フェルシア]:「吹雪くん」
[吹雪]:「お二人が今まで練習に付き合ってくれたから、ホーリーカルムを詠唱できるところまで漕ぎ着けることができましたし、こうやって練習を見守ってくれてるだけで、俺たちはみんな頑張ろうって思えるんです。お二人には本当に感謝してます」
……何だこの空気は。まるで二人に告白してるみたいだ。というか俺の発言からしか見ていないなら明らかにそうとしか見えないだろう。
[セフィル]:「君はできた男だな、吹雪。おばさん、少しドキっとしてしまったぞ」
[吹雪]:「お、おばさんって……学園長まだまだ若いでしょう」
[セフィル]:「そう、そういうところだ、君の素敵なところは。すぐに優しいフォローを入れてくれる。やろうとしてもなかなかできることではない」
[吹雪]:「え? 俺、本当のこと言っただけですけど」
[セフィル]:「……いかんな、このままでは」
[フェルシア]:「そうですね、生徒と教師のはあまり受け入れられませんから」
[吹雪]:「あの、お二人とも?」
[フェルシア]:「ああ、はい。ありがとう吹雪くん、私、普通に感動しちゃったわ。吹雪くんにそんな風に言ってもらえて、私は幸せ者だわ」
[吹雪]:「そんな大層なことを言ったつもりはないですけど」
[フェルシア]:「でも私たちは嬉しかったわ。ありがとね」
[吹雪]:「は、はい」
[セフィル]:「よし、これで気兼ねなく練習することができるな」
そうだ、本題はそこだった。
[セフィル]:「フェルに力を与えることに抵抗はないんだな?」
[吹雪]:「はい、もちろんです」
[セフィル]:「うむ、了解した。いいか? 唱え終わったからといってそこで終わりではないからな。 むしろそこからが始まりと言っていい。集中力の維持、それを忘れないように」
[吹雪]:「はい」
[セフィル]:「よし、では詠唱の仕方を教えよう。吹雪、こっちに」
[吹雪]:「はい」
……………………。
…………。
……。