マルカート(8)
[セフィル]:「この数字は、今現在のフェルの魔力のパーセンテージを示している。今のフェルの残り魔力は55%、つまり45%を消費してるということだ」
[吹雪]:「これを引き上げることが俺の仕事ってわけですか」
[フェルシア]:「そういうことだ。フェルにはあらかじめ魔法を空打ちして魔力を消費してもらった。吹雪には、フェルに魔力を分け与えてもらう」
[フェルシア]:「機械はもう1台あるから、吹雪くんもこれを付けてちょうだい」
[吹雪]:「はい、分かりました」
フェルシア先生の真似をして、腕に巻いてみる。すると、機械に俺のパーセンテージが表示された。
[セフィル]:「ふむ、94%か。後6%はどこにやったんだ?」
[吹雪]:「え? 特に身に覚えはないですが」
[フェルシア]:「よくあることよ。完全に100%になることなんてあんまりないから。知らず知らずに消費してることなんて日常茶飯事よ」
[吹雪]:「そうなんですか?」
[フェルシア]:「ええ、気にすることはないわ。90%以上は100%と同じようなものだから」
[セフィル]:「うん、さして問題はないから大丈夫だろう」
それなら一安心だ。
[セフィル]:「ホーリーカルムが見事成功すれば、吹雪の魔力のメーターが減り、フェルの魔力メーターが上昇するわけだ。しかし、ここで注意しなければいけないのは、吹雪の魔力が1減ったからといって、フェルの魔力が1上昇するとは限らないということだ」
[吹雪]:「それはもちろん、フェルシア先生のほうが力を持っているからですね」
[セフィル]:「そういうことだ。人それぞれだからな、吹雪の100%とフェルの100%にはそれなりの違いがある。まあ、思うように供給できてるか不安になるかもしれないが、吹雪のメーターが減ったぶんだけちゃんとフェルに力はいってるはずだから心配はしなくていいからな」
[吹雪]:「分かりました」
[フェルシア]:「吹雪くんの力、私に分けてね」
[セフィル]:「……フェル、今の発言何だかエロかったな」
[フェルシア]:「え? そうですか? 自覚はなかったんですけど」
[セフィル]:「そうやって、無意識に男を誘惑しているんだな。恐ろしい子だ」
[フェルシア]:「それはないと思いますよ。だって、吹雪くんは何にも思ってない顔してますし」
[セフィル]:「何? 吹雪、何にも感じなかったか?」
[吹雪]:「え? ええ、まあ」
[フェルシア]:「学園長、ひょっとして欲求不満なんじゃないですか?」
[セフィル]:「何? そんなことはないと思うんだが……」
[フェルシア]:「自分で自分に言い聞かせてるって可能性もありますよ?」
[セフィル]:「うむ……後で自問してみるとしよう。――と、話が反れてしまった、というか私が反らしてしまったのか。すまんな、吹雪」
[吹雪]:「いえ、気になさらず」
[セフィル]:「じゃあ、教えていこうか。まず、ホーリーカルムを詠唱するにおいて大事なのは集中力だ。自分の力を分け与える相手のことを思い浮かべて深く祈ること。相手を助けたいと思う心が、自分の力を分け与える力に変わるんだ」
[吹雪]:「集中か……」
[セフィル]:「問題ないと思うが、あの4人との仲は良好か?」
[吹雪]:「はい、俺は別に問題ないと思ってます」
[セフィル]:「そうか、よかった。嫌いな相手に力を与えたいとは思わないだろうからな」
確かに……。