カランド(26)
[繭子]:「うう、痛かった~」
[吹雪]:「自業自得だ。つかどうやったらトイレで居眠りできるんだよ」
[繭子]:「え? 全てを有りのままに受け入れたら自然と……」
[吹雪]:「有りのままに受け入れたらダメなんだよ。今自分が置かれてる状況を理解してれば寝てる暇がないことくらい分かるだろうが」
[繭子]:「だって、睡魔にはどうやったって――」
[吹雪]:「それ以上言うようなら、ゲンコツフルコースだぞ」
[繭子]:「ぜ、絶対に見つけるよ、家の鍵」
マユ姉は職員室に戻り、図書室の鍵を借りに行った。
[吹雪]:「重ね重ね申し訳ないです、フェルシア先生」
[フェルシア]:「あはは、まさかトイレで眠りこけてるとは私も予想外だったわ」
[吹雪]:「なかなかできないですよね、あんな器用なことは」
[フェルシア]:「あれがマユの才能かしらね」
[吹雪]:「何処でも寝れる、ですか?」
[フェルシア]:「ええ、きっとどんな辺境の地でも安眠できるでしょうね」
[吹雪]:「良いんだか悪いんだか……」
[フェルシア]:「確かに、危機感はゼロね。私は欲しくない才能だわ」
[吹雪]:「いや、俺もいりませんよ」
[フェルシア]:「気が合うわね、私たち」
[吹雪]:「そうですね」
[繭子]:「ん? 何の話してたの~?」
[フェルシア]:「マユは何処でも生きていけるって話よ」
[繭子]:「え~? 無理だよ~ワタシふーちゃんがいなかったら今ここにいないもん」
[吹雪]:「そんな自信満々に言うことじゃないだろ……」
[繭子]:「だってホントのことだもん。ずっとレトルトじゃ体壊しちゃうでしょ~?」
[フェルシア]:「自分で作るっていう選択肢はないのね?」
[繭子]:「ないです! もちろん」
[吹雪]:「自信持っていうな」
[繭子]:「ふーちゃん、これからもワタシを生かしてね」
[吹雪]:「……考えておく」
[繭子]:「二つ返事はしてくれないんだ」
[吹雪]:「これからの態度次第だな。つか、早いとこ図書室行こうぜ」
[繭子]:「あ、そうだね。レッツゴー!」
寝たからだろうか、何かマユ姉の声に張りが戻っていた。