『速記文字を読んでくれるお地蔵様』
上野国のある村で、お百姓さんが、田植えの手が足りずに困っていたのでした。いつもなら、母親と女房と三人で田植えをしていたのですが、母親は調子が悪く、女房は身重で、田植えどころではないのでした。まあ、それでも、ことしはやらないというわけにもいかないので、諦め気分で田植えを始めますと、どこからあらわれたのか、無表情な若者が、お手伝いしましょうかというような雰囲気で近寄ってきましたので、お願いしますというような雰囲気を出してみたところ、とんでもない速さで植えてくれ、お百姓さん自身が必要ないくらいでしたので、休んでいたところ、日暮れにはまだ早いのに、植え終わってしまいました。若者が、もう帰って大丈夫ですかというような雰囲気でおじぎをしますので、お百姓さんは、大したお礼もできないがうちへ寄って飯でも食べていってもらいたいというような雰囲気でおじぎを仕返しますと、何のそれには及びませんというような雰囲気で去っていってしまいました。
お百姓さんが、村の寄り合いのときに、この話をしたところ、同じような体験をした者が何人もいて、ある者は、急な雨のとき洗濯物を取り込んでもらったとか、鍋や釜の焦げをとってもらったとか、お母さんが見ていないうちにピーマンを食べてもらったとか、自分が書いた速記なのにどうしても読めない文字を読んでもらったとか、いろいろなことをしてくれたことがわかり、きっとこれは、お地蔵様のおかげだということになって、秋になると、米やら酒やらをお供えして、感謝したのでした。
教訓:子供たちは、グリーンピースや焼きナスなどを、喜んでお供えしたという。




