第36話 仕組まれた試合を崩す――ゴーレム戦の結末 モンスターコロシアム第二試合
第二試合の開始前。
また、あの男が現れた。
「まだ間に合うぞ」
コロシアムのオーナーは、にやりと笑う。
「今なら“仲間”に入れてやる」
その言葉に、おっさんは一切迷わなかった。
「断る」
一瞬で空気が凍る。
「……二度目だぞ?」
オーナーの低い声には、明らかに圧が宿っていた。
「分かって言ってるんだろうな」
「分かってるさ」
おっさんは肩をすくめ、まるで小さな虫が巨大な影を揺さぶっているように見えた。
「だから断ってる」
それだけ言って背を向けた。
完全な拒絶だった。
そして――第二試合。
アナウンスが響く。
対戦相手は、前回大会準優勝者。
使用する魔物は――ゴーレム。
「おいおい……」
マクダフが呆れたように笑う。
「露骨すぎるだろ」
闘技場に現れたゴーレムは、明らかに規格外だった。
本来なら広域戦を想定した巨大個体。
その重厚な体躯は、この狭いコロシアムを持ち込むにはあまりに大きかった。
目的は明白だった。
「確実に、潰す気だな」
おっさんが小さく言う。
対するバレットは、あまりにも小さい。
まるで、踏み潰されるために立てられた人形のような存在だ。
高さ 3 メートルを超える鉄と石の巨人に対して、ドワーフ製の銃を構えた小さなゴブリンが、どう戦うのか。
「無理だろ……」
「さすがに終わりだな」
観客の声が飛ぶ。
試合開始。
ゴーレムが一歩踏み出しただけで、地面が揺れた。
バレットは――逃げた。
撃たない。
ただ距離を取る。
「何やってんだ!?」
「撃てよ!」
「戦え!!」
罵声が飛ぶ。
だがバレットは止まらない。
走る。避ける。誘う。
ゴーレムは単調に追う。
その動きは重く、予測可能だ。
しかし、その巨大さが逆に、バレットの機動性を生み出していた。
「……そういうことか」
マクダフがにやりと笑う。
「でかいほど、止まれねぇ」
ゴーレムが腕を振り下ろす。
――外れた。
そのまま前へ踏み込む。
バレットは紙一重で回避し、さらに奥へ。
観客席の際まで引き込む。
「おい、やばいぞ……!」
誰かが叫ぶ。
ゴーレムが踏み込む。
止まれない。止まらない。
バランスが崩れる。
「倒れるぞ!!」
轟音。
巨体が闘技場の端に激突した。
床が砕け、壁が崩れる。
衝撃が観客席まで伝わり、最前列の椅子が飛び散る。
悲鳴と粉塵が広がった。
観客たちは、巨大な塊が自分たちを押しつぶすかのように怯える。
バレットは、その外側に立っていた。
無傷のまま。
しばらくして、審判の声が震える。
「……勝者、ゴブリン」
沈黙。
直後、会場が爆発したようにざわめいた。
「は!?」「こんなのアリかよ!」
「ルール違反だろ!」
違反ではない。
――ルール通りだ。
「くくっ……最高だな」
マクダフが笑う。
「これが“仕組みで勝つ”ってやつだ」
貴賓席では、副隊長が怒声を上げていた。
机が叩きつけられる。
矛先はオーナーへ向かう。
だがオーナーの顔色もまた、最悪だった。
ゴーレムの倒壊により会場は半壊。
観客にも被害が出ている。
「口止めにいくらかかる……」
治療費、修理費、精神的な補償……
損失は拡大する一方だった。
不正が露見すれば終わりだ。
彼らは、この「八百長」を隠蔽するために、さらなる出費を強いられることになる。
だが、支払うしかない。
それはさらなる出費を意味していた。
「ガキども……!」
オーナーの視線がこちらを射抜く。
怒りと殺意が混ざっている。
控室へ戻る途中。
懐の指輪が、再び熱を帯びた。
(……なんなんだ)
パックを見る。
彼は何も言っていないのに、こちらを見返していた。
まるで理解しているかのように。
第二試合でこの状況。
この先に何が起こるのか。
未知の指輪、強化されたゴブリンの真価、そしてコロシアムの深層に眠る「仕組み」。
「面白くなってきたな。ジョ~ン。」
おっさんが笑う。
その言葉だけが、妙に印象に残った。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 18
盾スキル 3
戦闘技術スキル 11
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




