表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/111

第2話 おっさん、国を取ると言い出す

町の中央にあるギルドで、俺は今日の稼ぎを確認する。


ここに来るまで、何度もアイテム袋を確かめた。

穴は空いていないか。

ドネタンは落としていないか。


……さすがに大丈夫だ。

ようやく少し僕は落ち着いた。


「おかえりなさいませ。本日はドブネズミ狩りですか——おや?」


受付の職員さんが目を丸くする。


「ドネタンが三本も! おめでとうございます」


思わず顔が緩む。

俺も、嬉しい。


刀剣スキル持ちの僕なら使えなくもない。

だが、狙っている欲しい大剣がある。ここは我慢だ。


迷わず、肉と皮と一緒に全部売却した。


買取結果。


・ドブネズミの肉:24 個 × 5g

・ドブネズミの皮:15 個 × 2g

・ドブネズミの短剣:3 個 × 1.2k


合計——3,750g。


……でかい。


こんな大金、初めて見た。


これが、本当の「稼ぎ」か。


ふと横を見ると、おっさんが少し揉めていた。

スキルだの何だのと、職員さんと話している。


しばらくして——


無事、ギルドカードを受け取ったらしい。


「やあ、坊主。待たせたな」


おっさんが戻ってくる。


「ほら、今日の取り分と……夕飯、頼むぞ」


そうだった。半分だ。


僕は1,875gを差し出す。


見たこともない大金から、見たこともない大金を分け与える。


……正直、少し惜しい。


だが、約束は約束だ。


ギルド近くの食堂に入る。


適当に注文して、席についた。


味は……たぶん普通だ。


特に美味しいとか、うまいとかはあまり思わない。

食事とはそんなものだと誰かが言っていた気がする。

食べられるだけありがたいのだ。


「そういえば、名前聞いてなかったな」


おっさんが口を開く。


「俺は——鈴木武だ」


……スズキ、タケシ。


聞いたことのない響きだ。


苗字付きってことは、偉い人なのか?


「これからよろしくな」


そう言われて、少し考える。


……これからも一緒にやるってことか?

また良い狩り場を僕に教えてくれるってことなのだろうか。

僕は少し舞い上がりながら自己紹介をした。


「僕はジョンです」


軽く頭を下げる。


「刀剣スキルと盾スキル、それと戦闘技術スキルを少し……」


一息おいて、続けた。僕は今日聞きたかったことをすべて聞いた。


「タケシさんって……何者なんですか?」


聞きたかったことを、全部ぶつける。


「ジョン、か」


おっさんは頷いた。


「戦闘スタイルから見て、刀剣と盾スキルを持っているのは見当がついたな。

ただ、戦技も習得しているのか?戦闘中にこれを活用しないと、戦技スキルは上がらないぞ。

それと、俺はこの世界の人間ではない……あと、これからジョン、お前には仲間を集めてギルドでフェス(戦闘団)を作ってもらい、国に戦争を仕掛け、この国を乗っ

取ってもらう」


色々と聞きたいことが聞けたが、僕には腑に落ちないことが多々あった。

頭の中がぐちゃぐちゃになり、次々と疑問が浮かび上がってきた。


「使っていたら勝手に上がるんですよねスキルって?

戦技って、戦闘技術のことですよね? どうすればその戦闘技術を上げられるんですか?

人間じゃない……ってどういうこと? ヒューマンではなくエルフとかってことですか?それと、フェスって何? 乗っ取るって具体的にどうやるの?!!」


僕は頭の中がこんがらがってきました。


「タケシさんじゃなくて、おっさんでいいよ。

ここら辺では、俺のような名前はあまり聞かないからな。色々と今から詮索されると面倒だ……。

戦技上げはきついぞ。上限の 100 まで上げるとなると、バーサーカー(狂戦士)レベルの強さが必要になる。

だが、脳筋なら必須とも言えるスキルだ。そのまま上げていけ」


僕は初めて聞く用語ばかりで、あまりよくわからなかった。


「スキルって 100 まで上げることができるって聞いたことがあるけど、僕でも 100 まで上げることってできるんですか?

人それぞれスキル上限があるって本当ですか?」


僕は一つ一つおっさんに聞いていく。


「ああ…… スキルは 0 からスタートして、上限の 100 まで上げることができる。

これは原則としてすべてそうだ。

刀剣・槍・棍棒・弓・戦技・回復魔法・神秘・強化・召喚、どれでも最大 100 だ。

人によってスキルを上げられる上限キャップがあるのも事実だが、少し話は違う。

見たところ、ここにいる冒険者達は 10 前後で、一番高い人でも 30 くらいか……

スキル上限を上げるためには特別なアイテムが必要だが、ジョンはまだその心配をする段階ではない。

見たところ、どのスキルも 3 前後だろう。どうやら、俺の知っている世界での基準より低いようだ。

まぁ、まだこの町しか知らないから何とも言えないが……!」


僕はまだ知らない用語が出てきておどろいた。


「おっさん、確かに僕の刀剣も盾もスキル値は 3 で、戦闘技術は 1 くらいです。よくわかりましたね……

それで、『この世界の人間ではない』ってどういうことですか? ヒューマンではなくエルフとかってことですか?」


「ジョンは、俺がエルフやドワーフに見えるのか? うれしいね……

いや、そのまんまの意味だ。俺はこの世界の者ではない。

別の世界…… いや、別の場所からやってきたと行ったほうがわかりやすいか。

俺はこの世界のことについては、お前よりも知り尽くして知っている。心配するな」


おっさんがドブネズミのレアアイテムドロップについて詳しかったこともこれで分かった。

僕はスライムにつままれる思いだ。


「よくわからないけど、おっさんがそう言うなら…… 僕は今日初めて大金を手に入れることができたし、何も言わないよ……

それで…… フェスや乗っ取りって具体的に何?」


僕は一番聞きたかったことを聞く。

聞いたらもう、レアアイテムドロップ狙いの平穏な狩り生活ができなくなるのではないかと思ったが、聞いた。


「フェス(戦闘団)とは、ギルドで一定の戦闘職や生産職のスキル能力値が高い人物を基本 7 人以上集めて作るのが一般的だ。

このフェス内でのフェス同士のチーム戦(PVP)や、PTパーティ組んでボス狩りを行うのが普通だが……こっちはどうなんだ?」


「僕は冒険者になりたての初心者ですよ…… フェスとかって言うのはあんまり詳しくないです。すみません……」


「そうか…… まぁフェスについてもまだ先の話だ、気にするな……

なんせこのフェスを作って申請するにも大金がかかるからな。大金だ……!」


いったいいくら必要なのだろうか、検討もつかない。


「その国を乗っ取るって言うのは…… 何かの言い回しですか?

聞いたこともないのですが、そんなこと……!」


「ジョン、知っているか……国は戦争を仕掛けて地図から消すことも、あるいは乗っ取ることもできる。適当な国の線を消してからまた引いて、その国を大きくすることも小さくすることもできる。

これからやっていくには、とりあえず弱小国であっても一つは欲しいところだ。

国を持っていると持っていないとでは、やれることの幅が全く違う……!」


大真面目におっさんは、一冒険者の初心者の僕に対して、途方もない話を食堂の隅の席で語る。


「そんな…… 戦争だなんて物騒なこと、ここで言っちゃだめですよ……

国同士戦争してるところもあるってのは聞いたことがありますけど、僕たちには関係のない遠い場所での話でしょ……

そんなことに自分から首を突っ込むなんて、どうかしてますよっ!!」


僕は今ならまだ平穏な日常に戻れると考えている。


「まぁ、この国がどうのと言うことについても、まだまだ先の話だジョン……

スキル上げ、フェス作り、 国盗り。

大まかな流れはこうだが、まずはジョン、何をするにも『金』だ……

明日から本格的に始めるぞ、楽しい金策だ──お前の大好きな金稼ぎだ」


そう言いながら、おっさんは明日の集合時間と集合場所を僕に告げると、食堂からそそくさと出て行ってしまった。

まだ何か用事があるらしい。


明日から、僕は本当に大金持ちになれるのだろうか。

フェスとは何か。戦争とは何か。

何も知らない初心者の僕が仲間を集めて、もし国を手に入れたら……僕は王様になるのか。


レアアイテムどころじゃない、見たこともない装備や道具を、おっさんは僕に使わせてくれるのだろうか。


――これから、僕はどうなるんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ