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かわいいは罪である

作者: 広津 雪露

 人は恋をすると盲目だというのはあながち嘘ではない。実際に後先を考えなくなる。恋愛感情のもつれが発端となる犯罪は少なくない。それはニュースを見ていても明らかである。


 映画や小説でも犯人が恋人であるケースは多い。大き過ぎる相手への愛。その思いは裏切られた瞬間に憎しみへと変貌する。


 可愛いは武器である、、、そのナイフは男を刺す。刺された方は即死だ。たとえそのナイフが偽りであったとしても、扱いが稚拙であったとしても男は避けはしない。ナイフは持って歩いているだけでも罪である。イコール可愛いは罪だ。


 あれは、専門学生時代のこと、、、


 彼女は学校の向かいにある小さなお好み焼屋の看板娘だった。小柄で素朴な感じだが笑顔が素敵でアニメ声。その上、ボディタッチが多く、無邪気で何でもリアクションをとってくれる明るい性格。多くの生徒が彼女に惹かれていた。


、、、もちろん私も。


 初めて彼女にあった時、不意に見た彼女の携帯の待ち受け画面。当時人気だったバンドの歌詞画、それはまさしく自分と同一のものだった。無言で私は自分の携帯の画面を彼女へ突き出した。お互い驚いた。私は運命の出会いなど信じていなかった。人は都合よく偶然のできごとを運命や奇跡と呼ぶだけである。しかし、この時の私は間違いなく恋愛ドラマの主人公気分になっていた。


 「ウチもそのバンド好きなんよ」と訛る彼女の笑顔のナイフは心臓を貫いた。



 彼女には恋人がいた。同じ学校、同じクラスの長身でダンスが得意な男。それでも私は諦めなかった。ラーメン、焼肉、カフェ、、、バイト代を使って誘いに誘った。笑顔で応じてくれる彼女。


 日々、一歩ずつだが明らかに彼女との距離が縮まっていった。週に一度は2人で食事に行くことが習慣になったのだ。


 そんなある日、我が人生において1番の可愛いは訪れた。

 

 近くで人気の豚骨ラーメン店、そこで一緒に食事をした帰りのことだ。この頃にはお互いにあだ名で呼び合っていた。絶品ラーメンの感想がお互いの口から溢れ、盛り上がる。

 「何か飲む?」

 「何でも大丈夫、一本でええよ。一緒に飲むけぇ」

 「了解」内心ソワソワしていたがら、あくまでクールを装う私。近くにあった自販機に駆け寄る。財布から小銭を探していた時だ。タタッと軽快に駆け寄る音がしたかと思うと同時に背中に衝撃があった。彼女が後ろから飛びついてきておんぶする形になった。正直、女性をおんぶしたことなどなかったからリアクションは地味だったろう。

 「えへへ、好きな人におんぶされたかったんよ」

そう言うと彼女は腕を私の首に強めに巻きつかせる。いやいやこんなの惚れすぎてまうやろ〜。


 このあと、色々あって付き合うことになる。そこに至るまで、

祭りでさりげなく自然に手を繋いでやろう作戦

恋人と別れるように仕向ける作戦

など、本当に色々あったが、その話はまた機会があれば、、、。

 兎に角このときの私は彼女のためなら何でもできると思っていた。私の心はナイフで滅多刺し状態である。とても危険な精神状態といえるだろう。


 

 可愛いは罪である。男を狂わせる。きっと幾つになっても、、、そのナイフは効果抜群である。


 


 


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