表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第5章

第5章 第2王子と秘密の取引


王宮の西翼にある、離宮の一室。

その部屋に招かれたのは、エールルただ一人だった。

「……第2王子ロディン殿下が、私に“密会の指名”を?」

エールルは不審に思いつつも、慎重に礼を整え室内に入る。

そこにいたのは、淡く微笑む金茶の髪の青年――第2王子ロディン・アーウェル。

社交界では気さくで物腰柔らかな王子として知られるが、彼の真の顔を知る者は少ない。

「エリールル嬢。……いや、エールル、と呼ばせてもらおうか」

「……それは、私の“本名”を知っているという意味でしょうか」

「君の目の奥にある“常識”は、ここの貴族にはないものだ。違う世界から来たと、僕は確信している」

 エールルは驚いた。

だがそれを悟らせまいと、あくまで微笑で返す。

「おそれながら、殿下。証拠もなく、他人の正体を見抜いたなどと言えば、陰謀論者と呼ばれますよ?」

「証拠はない。でも……僕の“勘”は、外れたことがない」

そしてロディンは、本題を口にした。

「――君たちが、デーナに復讐しようとしていることも、知っている」

「……!」

「ララリー嬢の生還も、僕にとっては予想の範囲内だ。……君たちの“女神の導き”が本物なら、僕は協力する」

「どうして?」

「父王が愚王となる前に、帝国を立て直す必要がある。そして“ブレンダン”のような影の人物を、王族の近くに置いてはいけない」

ロディンは、ブレンダンが王家に接近しようとしていることを危惧していた。

デーナの後ろ盾として王子たちに取り入り、次代の後継者に干渉しようと画策していたのだ。

「君たちの戦いは、私の未来にも関わっている。協力しよう」

「……条件は?」

「ただ一つ。君が持つ“知識”を、一部だけでいい。私にも共有してくれ」

交渉は静かに、しかし確実に成立した。

「では――手を取りましょう、“未来の王”」

エールルが手を差し出し、ロディンがその手を取る。

互いに信じきるには早すぎるが、共通の敵がある限り、同盟は続く。


***


その夜、ララリーとエールルは密かに再会する。

「……第2王子が、味方に?」

「そう。私たちの手に入らない“王家の情報”が、これからは流れてくる」

ララリーの瞳が鋭く光る。

「ふふ……面白くなってきたわね」

「次は、“証拠”を一つずつ形にしていこう」

――復讐の駒が、また一つ進んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ