プロローグ『英雄の終焉』–
空が、裂けていた。
嵐のような黒雲が渦を巻き、雷光が世界の天蓋を貫いている。
無数の閃光が空を走り、轟音が鼓膜を破壊するように降ってきた。
その真下、焦土と化した大地の中心に――彼は立っていた。
リオン=アークライト。
血と灰に染まった銀髪が、風に舞っていた。
その手には、かすかに光を残す神剣《ルミナ=エスペランサ》。
大地に倒れた魔王の骸を背に、彼は静かに目を閉じていた。
世界を救った、その瞬間だった。
「……終わったな」
呟いた声はかすれていて、震えていた。
だが、そこには確かな安堵があった。
背後で、甲冑の擦れる音。
仲間たちが、剣を収めて歩み寄ってくる――はずだった。
リオンは、ふと振り返った。
――だが、そこにあったのは剣の煌きだった。
時間が止まる。
光の剣が、彼の胸を貫いていた。
「……な、んで……?」
血の匂いが濃くなる。
世界がぐにゃりと歪んで見えた。
剣を握っていたのは、レイ。
旅を共にした、信頼していた剣士だった。
その顔には、哀しみも後悔もなかった。
あったのは、ただ“任務を終えた者”の冷めた瞳。
「ご苦労だった。君の役目は、ここまでだ」
その言葉と同時に、上空から神々しい光が差し込む。
女神の声が、天から降ってきた。
「勇者、リオン=アークライト。
使命完了により、即時処分を実行します」
その声は美しく、完全だった。
だがそれは、あまりにも――冷たすぎた。
マリアも、シオンも、誰も止めなかった。
祈りのポーズを取りながら、誰も彼を“仲間”と見なしていなかった。
(俺は……捨てられたのか……?)
剣が抜かれる。
激痛。だが、それ以上に胸を裂くのは心の空洞だった。
リオンの視界がぐらりと傾き、
地面が――まるで空のように、遠く落ちていく。
(守りたかった……ただ、それだけだったのに……)
意識が沈んでいく。
風が止まり、音が消え、
そして世界が**“色”を失った**。
*
「……ここは……?」
目を開けた。
そこは、黒だった。
天井も、壁も、空気さえも黒に染まった空間。
空気が重く、胸に圧し掛かるような重圧が支配している。
玉座があった。
巨大な黒の石でできたそれは、見るだけで“王”の存在を感じさせる。
そして――その玉座に、自分が座っていた。
「……はは……死んだと思ったのに……」
笑い声が漏れる。だがそれは乾いた音だった。
体を動かす。
重い。
体ではない、“存在”そのものが重いのだ。
左手を見た。
黒く変質した神盤が浮かんでいた。
まるで渦を巻く宇宙のような円盤が、ゆっくりと回転している。
中心に、“目”があった。
黄金の瞳がこちらを見返しているようで、ぞっとした。
そして、理解した。
「……俺はもう、勇者じゃない」
その言葉と同時に、空気が震えた。
闇が喜び、世界が泣いた。
神の“秩序”が微かに軋む音が聞こえた気がした。
リオン――いや、リヴァンは、静かに立ち上がった。
かつて、光を信じて世界を救った少年。
今は、闇の王座に座し、全てを見下ろす者。
「世界よ……今度は、俺が“選ぶ”番だ」
神盤が唸る。
黒い回転が速度を増し、空間にひびが走る。
そして、再び世界が回り始める――
今度は、“勇者”ではなく“魔王”によって。
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